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パナソニックが Osaka Metroへ純水素型燃料電池システムを納入

大阪メトロは未来の鉄道インフラを支えるため、パナソニック製の純水素型燃料電池と太陽光発電システムを導入し、CO2排出量削減に貢献します。

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パナソニックが Osaka Metroへ純水素型燃料電池システムを納入

パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社(以下、EW社)は、大阪市高速電気軌道株式会社(以下、Osaka Metro)の森之宮検車場に、2024年9月、純水素型燃料電池と太陽光発電システムを納入。Osaka Metroが目指すカーボンニュートラル実現に向けた実証実験のためのソリューションについて、現地搬入・設置までをワンストップで実施した。納入から1年が経つ今、公共交通機関という社会インフラの脱炭素化に貢献するパナソニックの最新エネルギーソリューションについて、その取り組みの軌跡と、今後にかける思いに迫った。

脱炭素社会を目指して~Osaka Metroが掲げる目標
大阪のまちを支える鉄道事業を推進しているOsaka Metroは、交通を核にした生活まちづくり企業への変革を目指している。その大きな目標の一つが、2050年度のカーボンニュートラルの実現だ。

同社はグループ全体で、2030年度にCO2排出量を46%削減(2013年度比)するという高い目標を掲げ、省エネルギー車両の導入や駅設備のLED化など、使用エネルギーを削減する施策を積極的に推進してきた。しかし、事業活動で排出されるCO2の多くは電力使用に由来するため、目標達成には既存の省エネ施策に加え、再生可能エネルギーの活用も、必要な施策として検討を行ってきた。

この課題に対し、同社は再生可能エネルギーの活用をさらに拡大すべく、具体的なソリューションの検討を開始。その過程でパナソニックが受注者として選定され、純水素型燃料電池と太陽光発電を組み合わせたエネルギーソリューションが採用されることになった。

Osaka Metroとパナソニックの水素×太陽光エネルギーソリューションとの出会い
自社施設への再生可能エネルギー導入拡大というミッションを掲げたOsaka Metroは、各メーカーに対し情報収集を進めていた。その中で、パナソニックが滋賀県の草津工場で進める実証施設「Panasonic HX Kusatsu(旧名称:H2 KIBOU FIELD)」に注目した。

「2023年1月にパナソニックさんの草津工場を見学する機会をいただいたのが、最初のきっかけとなりました」と語るのは、Osaka Metro 交通事業本部 先端技術センターの納塚 駿(のうづか しゅん)氏だ。


パナソニックが Osaka Metroへ純水素型燃料電池システムを納入
大阪市高速電気軌道株式会社(Osaka Metro) 交通事業本部 先端技術センター 先端技術研究課 納塚 駿(のうづか しゅん)氏

納塚氏:
情報収集をしていた中で、EW社さんが草津工場で実践しておられる自社開発の水素燃料電池と太陽光発電、蓄電池を組み合わせた仕組みが、最も当社の目指す姿に近しいものでした。視察後は「太陽光発電と水素発電を結合し、発電した電気を高圧で送る」プランについてご提案いただき、Osaka Metroとして再生可能エネルギーの利用拡大に既存の鉄道インフラを活用できる有効なプランであると判断し、今回のシステム導入、実証実験開始へとつながることになりました。

私たちは鉄道事業者であり、CO2排出量の多くが電気使用によるものです。この取り組みにより、複数の再エネ発電を組み合わせた電力の安定供給について知見を集積し、将来的には再エネ由来の電力を、鉄道を走らせる電気として直接利用することを目的に、ノウハウの確立を目指していきます。


パナソニックが Osaka Metroへ純水素型燃料電池システムを納入
水素・太陽光発電システム高圧連系設備の構成。太陽光発電システム100kWと純水素型燃料電池10kWの組み合わせで、システム合計で110kWの出力を有する。これらの機器が、森之宮検車場における受変電設備とつながる。各々の発電状況、設備の稼働状況は、専用の制御・計測機器で監視するシステム構成を実現

納塚氏:
システムの導入にあたっては、社内外の関係各所との調整に最も神経を使いました。

今回、Osaka Metroとしては施設内に水素発電設備を導入することが初めての挑戦だったこともあり、太陽光発電システムも含めた設備の仕様のほか、その安全性、電力品質などについて、各所に時間をかけて説明をしていきました。

施工にあたり、EW社さんには、当社の未来モビリティ体験型テーマパーク「e METRO MOBILITY TOWN」への電力供給といった当初からの計画変更にも柔軟に対応いただきながら、鉄道施設内での作業であることを十分配慮した、安全で計画性のある施工監理を行っていただきました。

EW社としてワンストップでの納入を実現
パナソニックグループは、長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げ、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現を目指す取り組みを推進している。

その取り組みを担う技術の一つが、1999年から開発を続ける燃料電池である。今回納入した純水素型燃料電池「PH1+」は、家庭用燃料電池「エネファーム」で培った技術を産業用に展開した製品。高い発電効率と信頼性を両立し、顧客のニーズに合わせた柔軟なシステム構築を可能にしている。

こうした技術力を背景に、今回のプロジェクトをパナソニック側ではパナソニックEWエンジニアリング株式会社・EW社 マーケティング本部が主体となってサポートしてきた。プロジェクトに参画した、EW社 ソリューションエンジニアリング本部の彦坂 多(ひこさか まさる)は語る。


パナソニックが Osaka Metroへ純水素型燃料電池システムを納入
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 ソリューションエンジニアリング本部 技術営業統括部 エネルギーソリューション設計技術課 課長 彦坂 多(ひこさか まさる)

彦坂:
今回、新たな取り組みとして、専用架台ユニット型による水素燃料電池システムの開発に挑戦しました。これは、工場であらかじめ、後から搬送しやすいサイズの架台を組んでおき、その上に純水素型燃料電池、排熱処理のための冷却塔、水素漏洩警報盤、電灯動力盤などを配置していく手法です。この架台ユニット化により、省スペース・省施工が実現しました。天候などで左右されてしまうことも多い搬入工事が、通常約30日程度かかっていたところ70%ほど日程削減でき、約10日で完了させることができました。


パナソニックが Osaka Metroへ純水素型燃料電池システムを納入
専用架台ユニット型 水素燃料電池システム

彦坂:
また今回は、純水素型燃料電池を安心して運用いただくため、太陽光発電システムなどの発電設備機器の見守りサービス「ソラネット」と、エネルギートータル管理サービス「P・TEM」を組み合わせた、見守りPoCシステムを使った概念実証についてもご提案しました。

水素に関わる見守りのソリューションは、今回が初の取り組みとなるため、EW社としても貴重な挑戦の機会をいただいていると思っています。

彦坂:
専用の制御・計測機器から、専用回線を経由してデータを送るこのシステムを活用することで、Osaka Metro様本社での遠隔監視と、「e METRO MOBILITY TOWN」でのエネルギーの見える化を実現しました。


パナソニックが Osaka Metroへ純水素型燃料電池システムを納入
未来モビリティ体験型テーマパーク「e METRO MOBILITY TOWN」(※2025年10月までの期間限定オープン)

Osaka Metroとパナソニック、それぞれの挑戦
納塚氏と彦坂は、Osaka Metroとパナソニック、それぞれの視点から、脱炭素社会の実現に向けた展望を述べた。

納塚氏:
鉄道事業においては、日々、何百本ものダイヤを実行するために多大な電力を使用します。自社での再エネ電力導入の取り組みを行うことで、鉄道だけでなくバス事業など鉄道以外の領域においても環境負荷の軽減を実現し、社会全体の環境問題に貢献していければと考えています。

彦坂:
私は入社以来30年近く、ソーラーパネルと言えば電卓に使われているものが主だった時代から、太陽電池モジュールの開発に携わってきました。このたび、最先端の技術でもって鉄道インフラの未来を支える礎となるソリューションをご提供できたことを大変嬉しく感じています。燃料電池はまだ新しい商品ですが、30年かけて太陽電池が世界で認知されたように、未来につながる商材だと確信しています。

パナソニックでは、草津工場のほかにも、イギリスのカーディフ、ドイツのミュンヘンで水素エネルギーを活用したプロジェクトを立ち上げています。今回、Osaka Metro様のお役に立たせていただいた経験も生かしながら海外でも事業を拡大していくことで、世界のカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきたいです。

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