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Hainbuch

スマートファクトリー :少ロットに対応する生産ラインの完全自動化を実現

ハインブッフのチャック自動交換システムにより、小ロットでも無人で24時間生産が可能に

スマートファクトリー :少ロットに対応する生産ラインの完全自動化を実現
WTO社のスマートファクトリー内部の様子

価格低減は常に求められていますが、製造コストは急激な上昇の一途をたどっています。
それに加え、生産効率向上に寄与できる経験豊富な人材の確保は以前にもまして難しい状況になっています。
今回ご紹介するドイツの旋盤用ツールホルダーメーカーWTO社をはじめ、多くの製造現場がこうした課題に直面しています。この問題を解決する近道は、様々な種類のワークに対応する段取り替えも含めた、生産設備の完全自動化です。 しかしながら、従来の生産システムでは対応できないため少ロット生産にも対応する、新しいプロセスを開発し、全体的なシステムの構築が必要です。例えば、1シフトで何度もチャック装置を自動で交換する必要があるかもしれません。自動交換を無人で行う場合、安定的な生産と安全性を担保するシステム構築が大変重要な課題となります。
そこでWTO社は、ドイツ・マーバッハを拠点とするハインブッフ社と緊密に協力し、技術的な課題を克服しながら完全自動化生産ラインの構築に成功しました。WTO社の新しいスマートファクトリーでは、すべてのプロセスが自動化されており、ロボットが部品のローディングだけではなく、チャック装置の交換やワークの自動搬送を行います。2022年末からは、このシステムでツールホルダーの部品を1個~100個のバッチサイズで24時間、無人で自動生産しています。これはWTO社とハインブッフが、3年間の開発期間を経てたどり着いた大きな成果です。

スマートファクトリのほかに選択肢は無かった
WTO社はドイツ・オッフェンブルク近郊のオールスバッハに拠点を置きます。このような地方都市は熟練技術者が不足しています。また、機械オペレーターの志願者も少なく、シフト制での労働は好まれない傾向にあります。こうした状況を憂慮したWTO社の代表取締役社長サーシャ チックフライ氏は、2016年に解決策を考え始めました。「熟練技術者の不足だけではなく、急激なコスト増も懸念材料でした。当社は国際的に事業を展開しているため、非常に高い国際競争圧力にさらされています。コストの安い海外に拠点を移す選択もありましたが、当社はドイツの生産拠点維持を第一に考え、長期的な競争力を維持するべく、全く新しい生産体制の構築を目指しました。その答えが、24時間、無人で稼働するスマートファクトリーでした。スマートファクトリーによって競争力を高められるだけではなく、今までとは異なる能力を有する優秀な人材の獲得にも繋がると考えました。」と、チックフライ氏は説明しています。

専門的なパートナーを探す
WTO 社は、この新たな大きなプロジェクトを実現するにあたり、各分野において高いレベルの専門知識を持つ信頼できるパートナー企業探しから始めました。「チャック装置に関する技術的な要件に関しては、専任チームが取組みました。最も重要な課題は、精度はもとより、安定性と安全性を確保しながら、どのようにチャック装置全体を自動で交換するか、という点でした。当社には公差3µmが要求される高精度な研削工程もあります。」とチックフライ氏は話しています。WTO社とハインブッフ社は、これまでも様々な国際的プロジェクトで協力し成功を収めていたため、ハインブッフ社もパートナーの候補に選ばれました。2019年末に、各候補企業がプレゼンを行い、最終的にハインブッフ社の提案が採用されました。

いよいよ生産を開始
WTO 社の生産工場には、NC旋盤が50台以上あります。これらの機械では主に3つ爪チャックが使用されており、爪交換の際は、オペレーターが爪成形や芯出し調整を行う必要があります。スマートファクトリーで最初に稼働した完全無人生産ラインでは、ハウジングの生産を行っています。同製造ラインで、焼入れ前と焼入れ後の素材の加工に対応しています。チックフライ氏は次のように説明しています。「スマートファクトリーには全て最新の工作機械を導入しました。専用機ではなく標準機を採用し、周辺機器を専用に設計してロボットによるチャック装置の自動交換を行っています。」4つの主軸にハインブッフのチャック装置が搭載されています。対向主軸型複合旋盤2台に数種類の内径マンドレルを、円筒研削盤には外径コレットチャックと内径マンドレルが取り付きます。研削加工に使用する外径コレットチャックは、従来の引込型TOPlus[トップラス]AC 100を導入しました。様々な寸法のハウジング加工に無人で対応するために、18種類のコレットチャックを自動交換しています。内径クランプ装置は、既存のMAXXOS[マクソス]T211内径マンドレルをベースに、自動交換における安全性を確保できる特殊内径マンドレルを新たに設計開発しました。

チャック装置に対する厳しい要求
ハインブッフ社のオートメーション部門の設計エンジニアで、当初からプロジェクトに携わってきたBjörn Schieslingにとって、自動化に際して考慮しなければならない基本的な要件がありました。「ワークホールディングの自動交換に足りないものは何かという点です。それは接触面を清掃してくれるオペレーターの存在です。ごく小さなキリコを噛みこんでも要求精度から外れる結果になります。そのほか安全面のチェックもあります。スピンドルは回転しているか、チャックのクランプ時のポジションは正しい位置にあるか、自動交換の際にチャックが正しく固定されているか、などです。一般的にはいずれの点も、通常はオペレーターが確認・調整しますが、自動化の場合、新たモニタリング方法を確立する必要がありました。当社にとって、これらの確認をチャック装置で行うことは大きなチャレンジでした。当然ながら、ストローク位置のモニタリング技術について、それを実現できるように工作機械メーカーとも協力する必要がありました。例えば、エアーで着座確認を行う場合、チャック装置にエアー回路を設けます。自動化の場合、工作機械メーカー側でエアー供給装置とセンサを取り付けて、さらに機械の制御システムと通信できるようにしてもらう必要がありました。このように最終的な解決に至るまでには様々な課題がありましたが、全て乗り越えることができました」と、Schieslingは説明しています。

安全性が最優先
内径マンドレル装置の自動交換について、ハインブッフ社はクランピングブッシュとエンドストップの単体部品を個別に段取り替える方式も検討しました。しかし、安全性や精度、キリコの噛みこみなどの点を考慮し、様々な方式を比較検討した結果、内径マンドレル全体を一式で交換する方法だけが安全なプロセスを確保できるという結論に至りました。そこで、研削加工セルと複合旋盤セルでは、centroteX[セントロテックス]ACクイックチェンジオーバー用インターフェースを備えたMAXXOS内径マンドレルをそれぞれの機械で10台ずつ用意し、ハウジングのクランプ径に応じてロボットで内径マンドレル装置の自動交換を行っています。

要望に応えたハインブッフ社
WTO社研削部門のマネージャーPhilipp Wußler氏は、当初、構想通りに上手くいくか大きな懸念を抱いていました。「最終的に懸念事項は全て解消されました。ハインブッフのチャック装置は、交換時の繰り返し精度、安定性と安全性において、すべての要件を満たしています。マンドレルの振れ精度は要求した3μm以下です」とWußler氏は非常に満足しています。従来のジョーチャックでは精度を確保するために、芯出し調整だけではなく、爪の研磨仕上げが必要な場合がありました。新しい自動化ラインでは、セットアップ時間が25%短縮されました。「チャック自体の精度も向上したため、不良率が大幅に減少し、ほぼゼロになりました。引込み式クランプによる把持剛性も上がったため、加工精度も向上しました。一度、テストで良品が得られれば、次のセットアップ以降は問題なく良品が加工できます。今はチャック装置で悩むことは無くなりました」とWußler氏は話しています。

オペレーターが常駐しているは指令室だけ
「このスマートファクトリーでのオペレーターによる作業は、材料の搬入だけになるよう考えられています。工作機械から完成品のハウジングをピックアップし、測定・検査を経て保管するところまで、無人搬送システムが行っています。スマートファクトリーには、製造工程の計画やプログラミングを行うためのオフィスを兼ねた指令室があります。チャック装置や自動化のための処理パラメータの決定もここで操作・監視されています」と、チックフライ氏は説明しています。次のプロジェクトもすでに計画されており、ハインブッフ社が、パートナーとしてチャック装置を担当します。また、立ち上げに至るプロセスにも協力します。最後にチックフライ氏は次のように話しています。「当社はハインブッフ社に非常に満足しています。この革新的なプロジェクトを一緒に進めてくれるパートナー企業を求めていましたが、ハインブッフは“1µm”も妥協することなく協力してくれました。特にハインブッフのSchiesling氏には、当社のWußlerとともに熱心にプロジェクトに取り組んでいただきました。大きな仕事を成功させるには、こうした人材が必要です。最終的に予想を上回る良い結果になりました」。

お客様のWTO Werkzeug-Einrichtungen GmbH社について
WTO社は、ドイツ・オールスバッハにある従業員280名の家族経営企業として2代目経営者が率いて、今年で40周年を迎えます。そのWTO社は、主にNC旋盤向けツールホルダーの開発・製造におけるパイオニアの1社です。今回のスマートファクトリーには4,000万ユーロを投資し、少量生産のデジタル化・自動化における新たな標準を打ち立てました。新しい14,000m²の社屋は、スマートファクトリー9,000m²とオフィス5,000m²で構成されています。このスマートファクトリーは、持続可能性にも配慮しており、再生可能エネルギーの活用を基本にしています。そのため太陽光発電システムを備え、プロセスの廃熱は暖房に利用されています。これにより、年間約1,000トンのCO2削減を実現しているのです。

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