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三菱電機、産業用インバータ向け高耐圧IGBTモジュールを発表

新たなパワーモジュール構成により、湿度や温度が変動する環境下においても、鉄道車両および重工業向けインバータの安定動作を実現することを目的としている。

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三菱電機、産業用インバータ向け高耐圧IGBTモジュールを発表

高耐圧IGBTパワーモジュールは、鉄道車両の駆動システムや大規模産業用インバータにおける中核部品であり、効率、絶縁性能、環境耐性はシステム信頼性に直結する要素である。こうした背景のもと、三菱電機株式会社は、鉄道車両を含む大規模産業機器向けに設計されたHVIGBT Module XBシリーズの新モデル2機種を発表し、絶縁耐圧の選択肢拡充と耐湿性能の課題解決を図った。

高出力システムにおける絶縁・耐湿課題
鉄道輸送や産業用電力変換分野における電動化・脱炭素化の進展に伴い、電力を高効率で変換するパワー半導体への需要は拡大している。これらの用途では、屋外や半屋外といった温度・湿度変動の大きい環境下でも、インバータが安定して動作することが求められる。

パワー半導体チップは、電力変換を担うアクティブ領域と、耐圧を保持する終端領域に大別される。高湿度環境では、湿気の影響による耐圧低下を防ぐため、終端領域を広く取る構造が必要となる。一方で、終端領域を拡大するとアクティブ領域が相対的に狭まり、出力密度や損失性能に制約が生じる。このため、高出力・低損失と高耐湿性を同時に実現することは長年の課題とされてきた。

XBシリーズにおけるチップ構造の改良
新たに投入されたXBシリーズでは、独自ダイオードと最適化されたIGBT素子を採用することで、このトレードオフの緩和を図っている。電界緩和構造と表面電荷制御構造を組み合わせた新しいチップ終端構造により、従来比で終端領域を約30%縮小した。

この設計により、従来製品と比較して約20倍の耐湿性を確保しつつ、アクティブ領域の拡大を可能にしている。その結果、高湿度環境下でも耐圧特性を安定的に維持し、大容量インバータに求められる出力性能を確保できる。

効率および信頼性の定量的改善
絶縁・耐湿性能に加え、エネルギー効率と信頼性の向上も数値として示されている。スイッチング損失は従来比で約5%低減され、連続運転時のインバータ効率向上に寄与する。また、逆回復安全動作領域(RRSOA)耐量は約2.5倍に向上しており、大容量駆動システムで想定される過渡動作や異常時に対する耐性を高めている。

これらの特性により、鉄道車両向け駆動インバータをはじめとする大規模産業機器において、長期的な安定運用と保守リスク低減が期待される。

製品バリエーションと適用分野
今回の発表では、耐圧4.5kV(6.0kVrms)の標準絶縁モデルと、10.2kVrmsの高絶縁モデルの2種類が用意されている。いずれも、鉄道車両や大規模産業用電力変換装置におけるインバータ用途を主な対象としており、高い電気的絶縁と環境耐性が求められるシステムに向けた設計となっている。

展示会での公開
HVIGBT Module XBシリーズは、2026年1月21日から23日まで東京ビッグサイトで開催される「第40回 NEPCON Japan エレクトロニクス開発・実装展」に出展予定である。加えて、北米、欧州、中国、インドなど、各地域の関連展示会での展示も計画されており、グローバルな産業用パワーエレクトロニクス市場への展開を見据えている。

高い絶縁耐圧、定量的に示された耐湿性向上、そしてスイッチング損失低減を組み合わせた今回の新モジュールは、エネルギー効率と信頼性が重視される次世代の産業用インバータ設計における選択肢を拡大するものとなっている。

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