組み込み機器のリアルタイムなAI処理と低消費電力を両立する、ビジョン向けAIアクセラレータ内蔵マイクロプロセッサ「RZ/Vシリーズ」を発表
第一弾として、産業、インフラ、リテール用の監視・認識カメラに向け「RZ/V2M」の提供を開始.
ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:柴田 英利、以下ルネサス)は、このたび、ルネサス独自の技術であるビジョン向けAIアクセラレータ「DRP(Dynamically Reconfigurable Processor)-AI」を内蔵したマイクロプロセッサ(MPU)「RZ/Vシリーズ」を発表します。その第一弾として、組み込み機器でのリアルタイムなAI推論を業界トップクラスの低消費電力で実現する「RZ/V2M」を開発し、一部の顧客向けにサンプル出荷を開始しました。量産は、2020年12月の予定です。
産業、インフラ用の監視カメラ、リテール用の商品スキャナやPOS端末カメラなど、AIを用いて人や物体をリアルタイムに認識するアプリケーションのニーズが急速に拡大する中、AI処理に必要な消費電力の増加と発熱が課題となっています。RZ/V2Mは、DRP-AIの高い電力効率を活かし、4W(Typ.)の低消費電力で駆動します。これにより、ヒートシンクや冷却ファンが不要となり、放熱対策が容易になるため、小型の端末に搭載できたり、機器の小型化が可能になり、組み込み機器でのAIの活用が拡がります。また、BOM(部品表)コストの低減にも貢献します。
さらに、RZ/V2Mには高解像度な4K画像を毎秒30フレーム処理可能なイメージシグナルプロセッサ(ISP)も搭載しました。本ISPは、天候や時間帯、設置場所に関わらず鮮明な画像を生成できるよう、明暗差の大きい画像に対応するHDR(ハイダイナミックレンジ)機能や、ノイズリダクション機能、歪み補正機能を搭載し、AIの認識精度を大幅に向上させます。これらの特長により、RZ/V2Mは、幅広い組み込み機器に精度の高いAIを低消費電力で活用できるという大きな変革をもたらします。
ルネサスのIoT・インフラ事業本部、SoCビジネス担当の執行役員である新田 啓人は次のように述べています。「RZ/Vシリーズは、より一層のリアルタイム性が必要なビジョン向けAI処理で課題となる、高性能と低消費電力の両立を果たす新シリーズです。今後は、カメラによる物体認識を応用して、カート内の商品を自動的に精算できるシステムや、工場内で人と安全に働ける協調型ロボット、医師の診断をサポートする医療カメラなど、RZ/Vシリーズにより、組み込み機器へのAIの活用範囲が劇的に広がると確信しています。」
今回、RZ/V2Mに内蔵したビジョン向けAIアクセラレータDRP-AIは、2Dバーコードや虹彩認証などに適したRZ/A2M内蔵のDRPをさらに強化したハードウェアIP(Intellectual Property)です。演算処理能力を強化するため、DRPに積和演算回路AI-MAC(Multiply Accumulation)を組み合わせ、AI推論用に最適化しました。DRP処理に比べ、約10倍の電力効率1TOPS/WクラスでAI処理が可能です。またDRP は、1クロックごとに演算回路の構成を動的に変更できるという特長から、DRP-AIもまた、進化を続ける新たなAIのアルゴリズムにも柔軟に対応できます。さらに、このDRP-AIを使用するために、ユーザの学習済みAIモデルを組み込み機器へ容易に実装する専用ツールDRP-AIトランスレータなども準備します。
RZ/V2M の主な特長は次の通りです。
- CPUは動作周波数1GHzのArm® Cortex®- A 53を2個搭載
- ビジョン向けAIアクセラレータのDRP-AI(1TOPS/Wクラス)を内蔵
- 4K/30fps対応のイメージシグナルプロセッサ(ISP)を内蔵
- 顔検出等の画像処理エンジンを内蔵
- H.265/H.264 エンコーダ/デコーダを内蔵
- 2カメラ同時入力可能な CMOS センサインタフェース(SLVS-EC、MIPI-CSI)に対応
- 高速インターフェース(USB3.1、PCI-Express、 Gigabit-Ethernet)に対応
- 表示インターフェース(MIPI-DSI、HDMI)に対応
- 消費電力は4W(Typ.)
- 15mm角のFCBGAパッケージ