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XILINX News
ザイリンクス、イノベーションとエッジでの AI アプリケーションを加速する適応型 Kria システム オン モジュール (SOM) ポートフォリオを発表
量産対応のエンベデッド ボードと低コストの開発者キットにより、 設計から運用開始までに要する期間を短縮 スマート シティ/スマート ファクトリのビジョン AI アプリケーション向け製品から順次発売.
ザイリンクス社 (本社: 米国カリフォルニア州サンノゼ、NASDAQ: XLNX) は 4 月 20 日 (米国時間)、小型フォームファクタの量産対応エンベデッド ボードによってエッジ ベース アプリケーションの運用までの期間を短縮する、適応型 Kria システム オン モジュール (SOM) ポートフォリオを発表した。
完全なソフトウェア スタックと量産グレードのビルド済みアクセラレーション アプリケーションを組み合わせた適応型 Kria SOM により、AI およびソフトウェア開発者はこれまでにない新しい方法でアダプティブ コンピューティングを利用できるようになる。
Kria SOM ポートフォリオの最初の製品となる Kria K26 SOM は、スマート シティおよびスマート ファクトリで使用されるビジョン AI アプリケーションをターゲットとしている。ザイリンクスは、サイズとコストに制約のあるアプリケーション向けのコスト重視 SOM から、より高い単位ワットあたりリアルタイム演算性能を発揮する高性能モジュールまで、幅広い SOM 製品ロードマップを計画している。
ザイリンクスの製品およびプラットフォーム マーケティング担当バイス プレジデントであるカーク・サバン (Kirk Saban) は、次のように述べている。 「データセンター向けの Alveo ボードから始まり、エンベデッド システム向けの完全なボード レベル ソリューション導入へと続くチップ レベル ビジネスを超えた進化をベースに、ザイリンクスは急成長する SOM 市場に参入しました。Kria SOM ポートフォリオは、我々の市場をより広範なエッジ アプリケーションへと拡大し、ソフトウェア開発者および AI 開発者に適応型ハードウェアの能力を活用する機会を提供します」
業界レポートによると、SOM 市場は年率約 11% で成長しており、市場全体の総売上高は 2025 年に 23 億米ドルに達すると予想されている[1]。
運用までの期間を最短化
ザイリンクスの適応型ハードウェアならではの優れた消費電力、性能、および柔軟性を備えた Kria SOM は、量産環境でそのまま運用できる適応型モジュールとして提供される。Kria SOM はビルド済みのソフトウェア スタックを含むエンド ツー エンドのボード レベル ソリューションを提供し、これによって運用までの期間が短縮される。チップダウン デザインの場合に比べ、Kria SOM を使用すると設計サイクルの初期工程を省略でき、運用までの期間を最大 9 か月短縮できる。
Kria K26 SOM は、クワッド コア Arm® Cortex A53 プロセッサ、25 万以上のロジック セル、および H.264/265 ビデオ コーデックを内蔵した Zynq® UltraScale+ MPSoC アーキテクチャをベースに構築されている。また、この SOM は 4GB の DDR4 メモリと 245 の I/O を備えており、事実上あらゆる種類のセンサーやインターフェイスに適応できる。Kria K26 SOM は 1.4TOPS (Tera Operations Per Second) の AI 演算性能を備えており、GPU ベースの SOM を使用した場合に比べ、ビジョン AI アプリケーションのレイテンシと消費電力を抑えながら 3 倍の性能を達成できる。このことは、防犯カメラ、道路ライブ カメラ、街頭カメラ、小売分析、マシン ビジョン、ビジョン ガイド ロボットなどのスマート ビジョン アプリケーションにおいて非常に重要な点である。
多くのソフトウェア開発者に門戸を開く
ザイリンクスはこれまで、ハードウェアの専門知識を持たない AI およびソフトウェア開発者がアダプティブ コンピューティングを容易に利用できるようにすべく、ツール フローへの大規模な投資を進めてきた。ハードウェアおよびソフトウェア プラットフォームと量産対応ビジョン アクセラレーション アプリケーションを組み合わせた Kria SOM ポートフォリオは、この取り組みを次のレベルに引き上げるものである。
これらのターンキー アプリケーションにより、FPGA ハードウェアの設計が一切不要になり、ソフトウェア開発者にとっての必要な作業はカスタム AI モデルとアプリケーション コードの統合だけとなる。また、オプションでビジョン パイプラインを変更する場合は、TensorFlow、Pytorch、Caffe フレームワークなどの使い慣れたデザイン環境、および C、C++、OpenCL、Python といったプログラミング言語を利用できる。これらはすべて、Vitis 統合ソフトウェア開発プラットフォームおよびライブラリによって容易に実行できる。
ソフトウェア ベース デザインに向けたこの新しいアクセラレーション アプリケーション パラダイムに伴い、ザイリンクスは初のエッジ アプリケーション向けエンベデッド アプリ ストアも発表している。ザイリンクス アプリ ストアでは、既存のデータセンター向け Alveo アプリケーション カタログに加え、Kria SOM 向けにザイリンクスおよびエコシステム パートナーが提供する幅広い種類のアプリケーションも入手可能となる。ザイリンクスからは、スマート カメラ トラッキングおよび顔検出、スマート ビジョンを使用した自然言語処理など、幅広い種類のオープンソース アクセラレーション アプリケーションが無償で提供される。
Kria SOM では標準の Yocto ベース PetaLinux がサポートされ、エンベデッド開発者によるカスタマイズと最適化も可能である。また、今回初めてザイリンクスは AI 開発者の間で一般的な Linux ディストリビューションである Ubuntu Linux のサポートに向けた Canonical 社との協業が近く始まることも発表している。これにより、多くの AI 開発者にとって使いやすさが向上すると同時に、既存のアプリケーションとの相互運用が可能になる。どちらの環境で開発し、どちらのアプローチで量産化するかはカスタマーが選択できる。いずれの環境もビルド済みの状態で提供され、ソフトウェア インフラストラクチャと便利なユーティリティが付属する。
Canonical 社 (Ubuntu) のマーケティング担当バイス プレジデントであるティーバウ・ラファノー (Thibaut Rouffineau) 氏は、次のように述べている。「スマート ビジョン アプリケーションに関わる開発者およびイノベーターは、クラウドからデスクトップまで、慣れ親しんだ Ubuntu エクスペリエンスを求めています。ザイリンクスとの協業を経て、Kria SOM を提供できることをうれしく思います。この新しい製品を使用することで、顧客は生産性を向上し、開発から量産までの移行を円滑に進めることができ、フィールドでの安定性とセキュリティも確保されるでしょう」
すぐに使える低コストの開発キット
Kria KV260 ビジョン AI スターター キットは低コストの使いやすい開発プラットフォームで、すぐにビジョン アプリケーションの設計を開始できる。このキットは、ザイリンクス アプリ ストアで提供されるアクセラレーション ビジョン アプリケーションをサポートする目的に特化して設計されており、FPGA や FPGA ツールの知識がなくても 1 時間以内にアプリケーションを動作させることができるのが大きな特長である。
Kria は開発者向けのオンライン リソースも充実しており、検討、設計から最終的な量産運用までの過程を独力で進めることが可能である。ホビー ユーザー、メーカー、企業の開発者はいずれもチュートリアル ビデオ、トレーニング コース、および広範なエコシステムのプロバイダーから提供されるアクセラレーション アプリケーション、デザイン サービスなどを利用して、デザイン サイクルの各工程を加速できる。
価格と供給体制
Kria KV260 ビジョン AI スターター キットの価格は 199 米ドルである。このキットで運用の準備が完了したら、Kria K26 プロダクション SOM (コマーシャル グレード 250 米ドル、インダストリアル グレード 350 米ドル) へシームレスに移行できる。
Kria K26 SOM および KV260 ビジョン AI スターター キットは、ザイリンクスおよびザイリンクス販売代理店で今すぐ注文が可能である。KV260 ビジョン AI スターター キットは即時出荷が可能で、コマーシャル グレードの Kria K26 SOM は 2021 年 5 月、インダストリアル グレードの K26 SOM は今夏の出荷開始を予定している。Ubuntu Linux を内蔵した Kria K26 SOM は 7 月の提供開始を予定している。詳細は、japan.xilinx.com/kria を参照されたい。
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