東芝がトラクション インバータ向けの先進的な 1200V SiC MOSFET を発表
X5M007E120 の独自のチェッカーボード SBD レイアウトにより、オン抵抗が 20 ~ 30% 低減され、EV モーター制御システムの信頼性が向上し、エネルギー効率と耐久性が確保されます。
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当社は、自動車用トラクションインバータ向けに、低オン抵抗と高信頼性を兼ね備えた新構造のベアダイ1200Vシリコンカーバイド(SiC)MOSFET X5M007E120を開発し、テストサンプルの出荷を開始しました。
般的なSiC MOSFETは、逆導通動作 時にボディーダイオードがバイポーラー通電するとオン抵抗が増大していく信頼性の課題がありました。当社のSiC MOSFETは、MOSFETチップにショットキーバリアダイオード (SBD) を内蔵することで、ボディーダイオードが動作しないように対策したデバイス構造を採用しています。しかしながら、内蔵SBDがチップ面積の一部を占有することは、MOSFETのオン動作の抵抗を決めるチャネル領域の面積を減少させ、チップのオン抵抗の上昇に直結します。
X5M007E120は、内蔵SBDの配置を従来のストライプ配置から市松模様に変更することで、ボディーダイオードのバイポーラー通電 を効果的に抑制し、同じSBD搭載面積でも約2倍の電流範囲までユニポーラー動作の上限が向上しました。また、チャネル密度が向上し、単位面積当たりのオン抵抗が、ストライプ配置の従来プロセスと比較して20%~30%程度低減しました。これにより、逆導通動作時の信頼性を保ちながら、オン抵抗の低減を実現し、車載トラクションインバーターなど、モーター制御用インバーターの用途で省エネルギー化に貢献します。
SiC MOSFETのオン抵抗を低減すると、短絡動作 時にMOSFET部に過剰に流れる電流が増加するため、短絡動作の耐久性が低下します。また、逆導通動作の信頼性向上のために内蔵SBDを動作しやすくすると、短絡動作時にSBD部の漏れ電流が増加し、短絡動作の耐久性の低下につながります。開発製品は、深いバリア構造 を採用することで、短絡動作中のMOSFET部の過剰な電流とSBD部の漏れ電流を抑制します。これにより、逆導通動作に対する優れた信頼性を保ちながら、短絡動作時の耐久性を向上することが可能です。
また、ベアダイを採用することで、ユーザーのニーズに応じたカスタマイズが可能となり、用途に合わせたソリューションを提供できます。
当社は、X5M007E120のエンジニアリングサンプルの出荷を2025年に、量産出荷を2026年に予定しており、さらなる特性改善に向けた検討を進めていきます。モーター制御用インバーターや電動車両の電力制御システムなど、エネルギー効率が求められる分野での活用に向け、より使いやすく、高性能なパワー半導体をユーザーに提供することで、脱炭素社会の実現に貢献します。
開発製品の主な特長
- 低オン抵抗と高信頼性を同時に実現
- 車載向けベアダイ
- AEC-Q101適合
- ドレイン・ソース間電圧定格: VDSS=1200V
- ドレイン電流 (DC) 定格: ID=(229)A
- オン抵抗が低い:
- RDS(ON)=7.2mΩ (typ.) (VGS=+18V、Ta=25°C)
- RDS(ON)=12.1mΩ (typ.) (VGS=+18V、Ta=175°C)