Starvis 2でスターダストを越えて : 低照度産業用カメラが天体撮影に新たな次元を切り開く
太陽系は何千年もの間、人類を魅了してきました。天文学の研究は、人類の存在に関する壮大な疑問の答えを探求しています。宇宙はどのくらいの大きさなのか?どのようにして誕生したのか?世界中の天文学者が宇宙に視線を投げかけています。しかし、素晴らしい画像を撮影できるのは巨大な宇宙望遠鏡だけではありません。標準的な産業用カメラを搭載した小型の望遠鏡でも、アマチュア天文学者は遠くまで見通すことができ、新たな知見を得ることもできます。多機能なカメラソフトウェアに加え、画像の品質には適切なセンサーが不可欠です。特に近赤外線 (NIR) 感度が高いカメラが求められています。オーストラリアのアマチュア天文学者、Anthony Wesley氏は、Sony Starvis 2センサーを搭載したIDSのuEye XCPカメラは、金星、火星、木星、土星などの近隣の惑星の高解像度画像を撮影するのに最適だと考えています。
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天体写真撮影には、技術的および自然的な2つの側面で特別な課題を克服しなければなりません。これは特に惑星の望遠鏡画像に当てはまります。まず、地球の大気は常に動き、星や惑星から発せられる光を歪める乱気流を生み出しています。このいわゆる「シーイング」は、地球上の望遠鏡で観察する場合、特に物体のちらつきやぼやけにつながります。この大気の乱れによるぼやけやゆがみは、詳細な画像の撮影を困難にします。
次に、地球の大気は可視光や短波長の青い光を吸収し、散乱させます。一方、近赤外線はあまり散乱しないため、より鮮明な画像が得られます。これは、大気の乱れによる「シーイング」の状態が悪い地域では特に重要です。さらに、赤外線は可視光よりも薄い雲や塵の粒子を透過しやすくなります。NIR 感度カメラを使用することで、天文学者は可視光では見えない星間塵の雲の背後に隠れた構造を認識することができます例えば、通常は濃い塵の雲に囲まれている若い星や星形成領域などがこれに該当します。また、土星や木星などの大きな惑星の画像を撮影する場合にも同じことが言えます。低照度領域で使用するカメラの性能が強力であればあるほど、画像はより詳細なものに仕上がります。さらに、赤外線は地上の人工光源の影響を受けにくいという点も見逃せません。つまりNIR感度センサーはある程度の光害がある地域でも、より良好な空の観測条件を提供できるということです。
接眼部にIDS産業用カメラuEye XCPを搭載した望遠鏡
アプリケーション
特にNIR感度の高いカメラが求められています。そうした中、アマチュア天文学者のAnthony Wesley氏は、Starvis 2クラスセンサーを搭載したXCPファミリーのIDSカメラの性能と天体写真撮影への適性を調査し、見事に成功しました。モノクロのIMX662センサーを搭載したIDSカメラモデルU3-38C0XCP-M-NOは、優れた結果をもたらします。
「このIDSカメラは口径415ミリメートル、焦点距離6000ミリメートルの望遠鏡の撮像素子です。」と、カメラの機能を説明します。「可視光と赤外線の両方で、交換可能なフィルターを通して、木星や土星などの惑星の1分から2分の動画を毎秒約60フレームの速度で記録します。」
望遠鏡の接眼部に収まる単一の光学ユニットを形成するために、Anthony Wesley氏はIDSカメラ、フィルターホイール、バーローレンズを直接ネジ止めしました。接眼レンズと望遠鏡の間にバーローレンズを配置することで、望遠鏡の焦点距離が延長され、追加の接眼レンズを必要とせずに倍率を上げることができます。「私は標準的なC/CS間距離を必要としないため、IDSカメラのベースを低距離で取り付けられるように調整しました」と、彼は設計について説明します。
カメラ、フィルターホイール、バーローレンズが接眼レンズホルダー内で光学ユニットを形成
「人間の目よりもはるかに優れた光感度。それがSonyのStarvis 2テクノロジー搭載センサーの強みです。」と、IDSのuEyeカメラ製品マネージャーであるJürgen Hejna氏は語り、センサーの強みを要約します。例えば、2.16 MPixel IMX662ローリングシャッターセンサー搭載のU3-38C0XCP Rev.1.2モデルは、ピクセル技術を使用して、特に高いダイナミックレンジで卓越した画質を実現します。このUSB3カメラは1秒あたり88枚の高速撮影が可能で、高感度と低解像度が求められる低照度アプリケーションに特に適しています。1/3インチセンサーは、いわゆる「反射防止コーティング」により、カメラ内の反射を最小限に抑えます。
Anthony Wesley氏は、このコンパクトカメラにはさらに利点があると指摘します。「コンパクトで軽量なuEye XCPはアマチュア用望遠鏡に最適です。uEyeカメラは安価ですが、アマチュア天文家が望遠鏡に求める機能はほぼすべて備えています。」また、IDSカメラをIDS peakソフトウェア開発キットで簡単に組み込める点にも関心したと言います。「私はアマチュア天文家から人気のあるFireCaptureソフトウェアのIDSカメラモジュールの開発者であり、メンテナンスも行っています。IDSモジュールはMicrosoft Visual StudioでC言語でプログラムされており、ソフトウェアの包括的な機能を使用できるようにFireCaptureに簡単にロードできるDLLにコンパイルされています。」
画像処理
FireCaptureで撮影したビデオの各セグメントは、WindowsソフトウェアであるAutostakkertで処理されます。Autostakkertは、夜空の画像を自動的に位置合わせし、結合するソフトウェアです。「このソフトウェアは個々の画像を結合し、平均化することで、地球の大気によるぼやけや歪みを補正します」とAnthony Wesley氏は説明します。これらのぼやけは、画像のぼやけやノイズとして現れ、重要な詳細部分を不明瞭にしてしまいます。そのため、天体画像では、デコンボリューション法が望遠鏡画像の画質を最適化し、ぼやけや歪みを補整するために使用されます。この場合、デコンボリューションと画像の鮮明化には、Astra ImageとRegistaxのソフトウェアパッケージが使用されます。次のステップでは、記録時間中に観測された対象物の回転を補正する必要があります。「例えば、木星は90秒に1度回転します」とAnthony氏は説明します。これにはWinjuposソフトウェアが使用され、時間差のある画像や動画を重ね合わせたり、回転を補正したり、赤・緑・青の画像を組み合わせることでカラー画像を作成することができます。「最終的な画像調整はGimpで行います。このようにして、映像の後処理で地球の大気によるぼやけを補正し、大幅に軽減して対象物の鮮明な画像を作成することができます。」とAnthony氏は最終的な画像処理手順を要約して説明します。
土星の望遠鏡画像(Astrodon Iシリーズのカラーフィルター使用)
ソフトウェア
しかし、これらすべてを可能にするには、ハードウェアとソフトウェアの完璧な相互作用が必要です。IDS カメラは、IDS peak ソフトウェア開発キット(SDK)を使用して簡単に統合できます。「IDS peakは当社のハードウェアに完璧にマッチしており、ユーザーは当社のカメラを最大限に活用できます。直感的なプログラミング体験を提供するプログラミングインターフェースとソフトウェアツールが含まれており、素早く簡単にインストールでき、多様なアプリケーションオプションが利用できます」と、IDSのエリアセールスマネージャーであるDamien Wang氏は強調します。これにより、天体写真撮影用に特別に開発されたFireCaptureソフトウェアの幅広い機能を使用できるようになります。「uEye XCPモデルにより、当社の製品ラインナップに新しい製品が加わるだけでなく、再び産業用カメラ市場のパイオニアの一員となりました。これらのカメラに搭載された最新のセンサー技術により、高速フレームレートと非常に高い画質が実現し、天体写真の撮影など光量の少ない状況でも赤外線領域で高い感度を発揮します。使用されているコンポーネントにより、プロだけでなくアマチュアの天文学者も天体の高解像度画像を撮影できます」とJürgen Hejna氏は言います。
Anthony Wesley氏は20年以上にわたり、惑星とカメラ市場を注意深く観察してきました。「カメラとセンサー技術は、NIR感度と低ノイズ動作の両面で進化を遂げています。Sony Starvis 2センサーと組み合わせたuEye XCPの技術は、間違いなく現在利用可能な最高の技術の1つです」と彼は結論づけました。
今後の展望
「Sony Starvis 2センサーを搭載したカメラは、その高感度、深い被写界深度、低ノイズにより、天体画像撮影コミュニティのアマチュア天文学者の間で人気となるでしょう」と、Anthony Wesley氏は語ります。「特に、700 nmから1000 nmのNIR領域では、太陽系の他の惑星に対する理解を深める上で非常に興味深い成果が得られるでしょう。」しかし、このカメラの応用分野は宇宙だけにとどまりません。「使用されている技術の多くは、低照度環境下での水中写真など、同様の課題を抱える他の分野にも応用できます」と、オーストラリア出身の同氏は勧めます。
カメラ
uEye XCP - 業界最小の C マウント付きハウジングカメラ
使用されたモデル: U3-38C0XCP-M-NO
カメラファミリー: uEye XCP
クライアント
Anthony Wesley - 背景に火星
Anthony Wesley氏はオーストラリアのアマチュア天文学者で、映像天文学と太陽系の惑星の低照度撮影を専門としています。同氏は、惑星撮影ツールのトップクラスの1つであるFireCaptureに、複数のカメラメーカーのさまざまなカメラのサポートを追加し、uEye+ XCPカメラを非常に高く評価しています。Sony Starvis 2センサーを搭載したuEye+ XCPカメラに、Anthony Wesley氏は深く納得しました。
著者
Silke von Gemmingen
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