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Flir Xシリーズカメラ、古代ヘルクラネウム写本の非破壊解析を支援

研究者らは、パルスサーモグラフィと高速熱画像技術を活用し、物理的接触を行うことなく、脆弱な炭化パピルスに隠された文字の解読と状態評価を進めている。

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Flir Xシリーズカメラ、古代ヘルクラネウム写本の非破壊解析を支援

Flirのサーモグラフィ技術は、イタリアの研究者によるヘルクラネウム・パピルスの隠された文字の解読を支援しています。ヘルクラネウム・パピルスは、西暦79年のヴェスヴィオ火山噴火によって炭化した古代写本の貴重なコレクションです。高度なFlir熱画像カメラが備える2.775 MHzの高速アナログ・ロックイン入力ポートを活用したパルスサーモグラフィにより、科学者たちは肉眼では見えなかった文字を復元するとともに、これらの文書の脆弱な内部構造について新たな知見を得ています。掲載画像はすべて S. Ceccarelli らによる SciRep 15, 34466 (2025) に基づいています。

この重要なプロジェクトは、イタリア国立研究評議会(CNR)の文化遺産科学研究所(Institute of Heritage Science)の研究者チームが主導しており、古代ギリシャ・ローマ世界で唯一現存する図書館の遺産を、非破壊で調査・保存する方法を探究しています。

これらの巻物は18世紀にヘルクラネウムの「パピルス荘(Villa dei Papiri)」の発掘調査で発見されました。火山噴火時の高熱と火山堆積物への埋没によって炭化しながらも保存されたのです。この特異な保存過程によって写本は現代まで残りましたが、その解読と保護には大きな課題が生じています。

多くのパピルスは数世紀前に機械的に展開され、支持板に固定されました。しかし、その断片は極めて脆弱で、多層構造となっている場合が多く、判読が非常に困難です。

従来のイメージング技術の限界
研究者が直面する主要な課題の一つは、炭化したパピルス基材とインクの両方が黒色であるため、従来の可視光イメージングでは十分なコントラストが得られず、区別が極めて難しいことです。X線などの高度な技術は、特にAIと組み合わせることで有効ですが、より複雑で高コストであり、専用設備を備えた研究施設へパピルスを輸送する必要があります。

こうした課題に対応するため、保存修復の専門家たちは、制御された光励起と高速熱画像を組み合わせたパルスサーモグラフィを採用しました。これは、短時間の光パルスでパピルスを照射し、その後の熱応答を時間経過とともに記録する手法です。

表面の文字は、インクが周囲のパピルス材料とは異なる光吸収特性を持つため、励起直後の赤外線画像で即座に可視化されます。その後数秒間にわたり熱が試料内部へ伝播することで、より深部の構造や埋もれた特徴が明らかになります。この時間依存の熱挙動により、研究者は文字と基材を識別できます。


Flir Xシリーズカメラ、古代ヘルクラネウム写本の非破壊解析を支援

先進的な熱画像技術

このプロジェクトの中核を担うのが、Flir Xシリーズ熱画像カメラです。高速かつ高感度の赤外線イメージング性能と高度な熱解析機能を兼ね備え、精度とデータ完全性が求められる科学研究用途に最適です。

中波長赤外線(MWIR)領域で動作するFlir Xシリーズにより、研究者は高速な熱現象を極めて高い感度で捉えることができ、パルスサーモグラフィ解析中にインク部分と非インク部分のわずかな温度差を可視化できました。Xシリーズは外部基準信号を受信する高速アナログ・ロックイン入力ポートを備えており、2.775 MHzのサンプリングレートによる高速熱解析を可能にします。この機能により、材料内の微弱信号や極めて小さな温度差の検出が可能になります。

研究チームは2台のフラッシュランプを使用して制御された励起を行いながら、パピルスの温度上昇を2~3℃に抑制しました。これは古代資料に損傷を与えるレベルを大きく下回ります。また、特殊なフィルタリングシステムによって紫外線曝露を防ぎ、不要な赤外線反射も最小限に抑えました。

プロジェクトチームによれば、Flir Xシリーズの高感度、高空間分解能、高度な記録機能は、微細な熱コントラストの検出と画像品質の維持において特に重要な役割を果たしました。

また、フレーム落ちのない連続的な熱データのストリーミングおよび記録機能により、Flir Research Studioソフトウェアを用いた詳細な後処理と解析も可能となりました。

特筆すべき点として、この手法は完全な非接触・非破壊であり、物理的操作や支持体からの取り外しが困難な文化遺産資料の調査に不可欠な要件を満たしています。


Flir Xシリーズカメラ、古代ヘルクラネウム写本の非破壊解析を支援

文字解読を超えた価値

このプロジェクトの主目的は隠された文字の可視化ですが、パルスサーモグラフィは保存修復の専門家にとって有益な構造情報も提供します。

熱がより長い時間をかけてパピルス内部へ拡散すると、繊維構造、重なり合った層、支持板との接着部位などが熱データとして可視化されます。これにより、保存修復担当者は資料の物理的状態をより深く理解し、劣化や剥離が進行している箇所を特定できます。

同一の熱データセットから文字情報と基材構造の両方を取得できることは、修復計画や長期保存戦略において大きな利点となります。特に、一部の写本には歴史的な展開作業の過程で形成された複数の圧縮層が存在します。こうした領域では下層が完全には分離せず残っているため、従来のイメージング手法では解析が困難な複雑な構造となっています。

研究者らはまた、競合する一部技術では装置が大型化しやすく、設置条件が制約されるほか、多層材料の観察時に画像解像度が低下する場合があることも指摘しています。

今後の可能性

残された課題の一つは、パピルス裏面に記された文字や、多層構造の奥深くに埋もれた文字の検出です。このような領域では励起光の到達が限定されるため、深部からの熱情報は検出できても、信号は弱く、熱拡散によって不鮮明になります。

この課題を克服するため、CNRチームは現在AIベースの画像処理技術の活用を進めています。AI支援解析によって、インクとパピルス基材の識別精度がさらに向上し、可読性の改善や将来的な文書解釈の支援につながる可能性があります。

将来がどのような展開を迎えるとしても、研究チームはパルスサーモグラフィが文化遺産科学における他の先進技術を補完する重要な手法になると確信しています。このプロジェクトは、Flirの熱画像技術が科学研究および文化財保存分野で果たす役割の拡大を示しています。高速熱データ取得と高度な解析手法を組み合わせることで、研究者はこれまで不可能だった方法で、世界でも最も脆弱な歴史的遺物の調査を行えるようになっています。

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