ZF 、2020年決算発表:変革を加速させ、新しい技術領域で利益を担保
ドイツ、 フリードリヒスハーフェン発; ゼット・エフ・フリードリヒスハーフェン社(以下、ZF)は、2020会計年度の業績を発表しました。
テクノロジーカンパニーであるZFは、モビリティの変革への対応に引き続き注力しました。 電動パワートレイン・テクノロジー事業部の設立、商用車向け技術を提供するWABCO社との統合、ソフトウェアソリューションの販売、および新ソフトウェアセンターのローンチはその代表例です。
経済が落ち込む中、ZFは新しい技術領域で大型案件を受注しました。これにより、 ZFは「次世代モビリティ(Next Generation Mobility)」戦略の下での将来的な成長を確保することができました。しかしながら、ZFも2020年の決算数値には新型コロナウイルスの影響を受けました。 ZFグループの売上高は326億ユーロで、前年の売上高365億ユーロを11%下回りました。 調整後EBITは10億ユーロ(前年度15億ユーロ)、 調整後のEBITマージンは3.2%(前年度4.1%)、 税引後純利益はマイナス7億4,100万ユーロでした。
- 一貫してモビリティの変革に対応
- 将来の技術に関する長期的な大型案件を受注
- 新しいビジネス分野であるソフトウェアソリューションとセントラルコンピューターを確立
- 世界的に風力発電事業を拡大
- 2020年の売上高は326億ユーロ(前年度365億ユーロ)
- 調整後EBITは10億ユーロ(前年度15億ユーロ)、調整後EBITマージンは3.2%(前年度4.1%)
ZFのCEO、ウォルフ=ヘニング・シャイダーは、決算発表で次のように述べています。「2020年は難しい状況だったにも関わらず、私たちは一丸となってこの危機に対応し、組織変革を大幅に進めることができました。そして、将来の技術に関連したZFの戦略的に重要な分野で、大型の新規ビジネスを受注しました」。
2021年のはじめに、ZFは乗用車向けの従来型、ハイブリッド、および完全電動のドライブ技術を扱う、電動パワートレイン・テクノロジー事業部を新しく設立しました。 このように、ZFは電動化への変革を順調に進めています。シャイダーCEOは次のように続けます。「私たちは、すべての範囲の電動化技術をこの事業部からお客様に提供することができます」。
製品の中心となるのは、パワーエレクトロニクスの主要部品としてのインバーターです。シャイダーCEOは次のように強調します。 「このセグメントで、欧州のマーケットリーダー、そしてグローバルでのトップサプライヤーになりたいと考えています」。ZFは、2020年末までに、今後数年間で140億ユーロの売り上げとなる電動ドライブライン部品を受注しました。 また、2021年に入ってからの数か月間で追加の新規受注も獲得し、この好調な流れは続いています。 ZFは、新事業部の設立により、部門間の連携を強化し、迅速な意思決定が可能になりました。
リーディングシステムサプライヤーとしての商用車テクノロジー事業部
ZFは商用車セクターにおいても、一体化した効率的かつ協力的な組織を目指しています。商用車向け技術を提供するWABCO社は、今年末までにZFの商用車テクノロジー事業部と統合される予定です。 WABCO社は2020年5月29日に買収されました。買収後7ヶ月間の関連数値は連結財務諸表に含まれています。
シャイダーCEOは、統合プロセスは非常に大きく進んでいると見ています。「ZFとWABCO社には高い親和性があります。私たちは、最初に立ち上げた共同プロジェクトから、それらをお客様からの受注につなげることができました。これらのことから、私たちが製品群や新規注文に加え、財政的にもすでにこの統合による恩恵を受けていることがわかります」。
新しい事業分野として確立したソフトウェアとセントラルコンピューター
ZFの長期的な戦略は、エレクトロニクス、ソフトウェア、自動運転の分野で加速しています。 ZFはソフトウェアソリューションの開発を加速し、データをベースにした製品とサービスを収益性の高いビジネスモデルへと変える、ZFグローバルソフトウェアセンターを立ち上げました。 そして、ZFは初めて、ハードウェアとは別に購入できるソフトウェア製品を提供します。今後、車載ソフトウェアはますます重要になり、より多くの部品にデータソースでもあるセンサーが装備されていくため、グローバルソフトウェアセンターには大きな可能性があります。 グローバルソフトウェアセンターは、最新のソフトウェア開発プロセスの下、高性能セントラルコンピューター用の自動車向けミドルウェアを先日発表しました。
次世代の車両においては、パワフルなセントラルコンピューターが多くの小型制御ユニットに取って代わるため、ソフトウェアに加えて、モジュール型高性能コンピューター「ZF ProAI」などのハードウェアにも高い需要があります。 最新のZF ProAIは車両のデジタル化とネットワーキングの新基準に設定します。 ZFは、世界中の乗用車メーカーと商用車メーカー両方に数百万台のZF ProAIユニットを供給します。シャイダーCEOは次のように述べています。「私たちの目標は、包括的にデジタル化を推進することによって、ソフトウェアと高性能コンピューティングにおけるZFの地位を確保し、さらに拡大することです。 そして、ZFは、セントラルコントロールユニットとソフトウェア製品の主要プロバイダーになることを目指しています」。
風力発電技術も推進
2020年、産業機器を取り扱うインダストリアル・テクノロジー事業部でも成功を収めています。たとえば、風力テクノロジー部門の製品には高い需要があり、 この部門の売上高は、2013年の約2億3,000万ユーロから、昨年初めて10億ユーロとなり、4倍になりました。 ZFのギアボックス設計は、新しいプラットフォームに基づき標準化されているため、風力タービンメーカーの需要に柔軟に対応することができます。そして、新しいタービンモデルにも迅速に対応することができ、市場投入までの時間が短縮されます。
ZFは先日、デンマークの風力タービンメーカーであるベスタス社(Vestas)との戦略的パートナーシップに合意しました。そして、共同で洋上向け世界最大クラスの15メガワット風力タービン用ギアボックスを開発します。 これらのタービンの1つで、初めて、年間約80ギガワット時のグリーンエネルギーを生成することができるようになり、ひとつの風力タービンで欧州の約2万世帯の電力供給をカバーし、3万8千トン以上のCO2を削減することができます。これは、再生可能エネルギーの推進と温室効果ガスの削減に対するZFの積極的な取り組みを示すものです。
意欲的な目標:2040年までにクライメート・ニュートラル達成
持続可能な企業経営の原則は、ZFの戦略にしっかりと根付いており、製品、生産、従業員、サプライチェーンの4つの分野でサステナビリティへの取り組みを行っています。シャイダーCEOは次のように述べています。「私たちの目標は、2040年までにクライメート・ニュートラルを達成することです。これはパリ協定の計画より10年早いものです。特に、サプライチェーン全体で組織的にCO2排出量を削減したいと考えています」。 そのため、ZFは持続可能性と脱炭素化に対するビジネスパートナーの意識向上を目的とするサステナビリティに関する基準を設けました。また、ZFは、環境保護は共同の取り組みによってのみ成功するとの考えから、世界経済フォーラムの「CEO気候リーダーズ同盟(Alliance of CEO Climate Leaders)」に加盟しています。
主要数値:2020年下半期の力強い回復
ZFグループの2020年の売上高は326億ユーロ(前年度365億ユーロ)で、前年より11%減少しました。 ZFのCFOであるコンスタンチン・ザウアー博士は次のように述べています。「パンデミックの発生後、私たちはすべての支出のチェックを迅速に行いました。コストと設備投資を厳密に管理し、コスト構造を調整することで、下半期の業績とキャッシュフローを大幅に改善することができました。 また、市場の回復も助けになりました」。 ZFも中国市場の回復による大きな恩恵を受けたため、アジア太平洋地域の売上高は前年の数値をわずかに上回りました。
調整後EBITは10億4,700万ユーロ(前年度15億300万ユーロ)でした。 調整後のEBITマージンは3.2%に低下しました(前年度4.1%)。 M&Aのために調整されたフリーキャッシュフローは、9億9,400万ユーロ(前年度8億300万ユーロ)でした。 マイナス7億4,100万ユーロの税引後純利益は、基本的に、組織変革と将来に向けた多額の先行投資によるものです。
ZFは研究開発への投資も継続し、2020年の研究開発費比率は前年比で7.3%から7.7%に増加しました。これは、25億ユーロ(前年度27億ユーロ)の研究開発費に相当します。 また、固定資産への投資額は14億ユーロ(前年度19億ユーロ)で、 投資比率は4.4%(前年度5.2%)でした。
追加の流動性を確保
財務状況を改善するために、ZFはシンジケート与信(限度)枠を通じて2020年上半期に追加の流動性を確保しました。 尚、これは2020年後半に全額返済されています。また、銀行コンソーシアムとの間で借入条項の見直しにも合意しました。 そして今回初めて、ZFは迅速で柔軟な手続きによる社債発行が可能なEMTNプログラム(Euro Medium Term Note)を設定し、2020年秋にすでに総額20億ユーロの社債を発行しました。ザウアーCFOは以下のように述べています。「資本市場と投資家はこれらすべての措置を高く評価していました。これは、困難な時期でもZFの財政的安定に対する投資家からの信頼を強調するものです」。
グループ内人員の再配置
将来的に重要となる技術に注力するには、ZF従業員にも最新スキルと資質が必要になります。 ZFは現在、従業員が新しい技術の知識を得ることを目的としたトレーニング・プログラムを実施しています。たとえば、 電動化に関する研修「E-Cademy」は技術の変化に対応する従業員をサポートします。 この包括的なトレーニング・プログラムは、従業員が将来の業務のための知識を取得できるようにつくられています。
同時に、ZFは、今後数年間で、減少していく世界の自動車市場の生産レベルに合わせて徐々に人員を調整しています。 たとえばドイツでは、約2,000人の従業員が早期退職の申し出を受け入れました。 2020年、ZFはグローバルで6,450の業務数を削減し、電動化、自動運転、ソフトウェア開発の分野で追加の雇用を創出しました。 2020年12月31日の時点で、ZFの従業員は全世界で153,522人(前年度147,797人)でした。 この増加は、2020年5月末に統合されたWABCO社の従業員約12,000人によるものです。
2021年の見通し
長期的な戦略的組織変革、将来技術分野の拡大、そして昨年の新規受注を考慮して、ZFは自信をもって先を見据えています。世界経済の回復と各事業部の概算に基づいて、ZFは今年370億ユーロから390億ユーロの売上高と4.5~5.5%の範囲の調整済みEBITマージンを予測しています。 調整後のフリーキャッシュフローは、8億ユーロから12億ユーロの間になると予想されます。 これらの予測には、新型コロナウイルスに起因する不透明性やロックダウン期間の延長の影響を避けることはできません。また、 現在の半導体不足の問題は、ZFを含む業界全体に影響を及ぼしますが、現時点では、2021年通年への影響を算定することは時期尚早です。
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