www.engineering-japan.com
EATON APAC

アジアの未来は持続可能な電力管理へ向かっているが、日本は関心が薄い

世界的な電力管理企業イートン社は、アジア6地域での電力管理事情を調査しました。デジタル経済が活性化する中、企業は持続可能な目標を満たすと共に、デジタルインフラでのエネルギー需要の急増に対処しなければならないという問題を抱えているからです。インテリジェントな電力管理が環境に優しいデジタル化を進めると期待されています。このエネルギー転換を企業がスムーズに実施できるように、イートン社は将来の課題と機会を特定するための調査を依頼しました。

 
APACでの最大の関心はエネルギーコストと最適化及びエネルギー削減
APACでの最大の関心事はエネルギーコストと最適化が43%、エネルギーの削減が43%でした。この結果、持続可能な目標を達成するためにアジア企業はコスト削減を優先していることがわかりました。電力管理における優先課題をたずねたところ、エネルギーコストと最適化を上げた企業は77%、消費電力の削減と答えた企業は66%、現在の使用エネルギーの内、再生可能エネルギーの割合を増やすと答えた企業は53%、ダウンタイムの削減と答えた企業は47%、という結果になりました。

この調査は、シンガポール、オーストラリア、インドネシア、日本、韓国、台湾の6地域で電力管理の職務に就いている180名の専門家に聞いたものです。各地域からそれぞれ30名の回答者に答えてもらいました。


アジアの未来は持続可能な電力管理へ向かっているが、日本は関心が薄い

図 電力管理の最優先課題

電力管理における優先事項に大きく影響を及ぼす要素は何か、とたずねたところ、最も多かった回答は、持続可能な目標だと答えた企業は62%に達しました。その次が、企業のコスト削減対策58%、企業の長期活動計画57%、中核事業でのエネルギー管理40%、と続きました。すなわち、電力管理ではエネルギーコストと最適化を果たすために持続可能な目標と組み合わせて実現しようとする企業が多いようです。

日本では電力管理ソリューションへの関心が低い
電力管理ソリューションにはソフトウエアや蓄電池、UPS(無停電電源)、コンテナ化されたモジュールなどが含まれますが、日本はアジア諸国に比べ関心が低いことが見られます。電力管理に新しいデジタル技術を導入することを目的とすると答えた日本企業は27%しかなく、台湾は73%、オーストラリア67%、韓国63%と高く、アジア太平洋地区(APAC)の平均でも60%に達しています。ところが、日本での大きな関心事は、UPSが37%で、電力保護回路が30%、発電機が20%という結果でした。APACでは、インテリジェントな電力管理ソリューション(ソフトウエア)が70%、蓄電池63%、コンテナ化されたモジュールソリューションが45%、UPSは41%、冷却技術35%でした。

日本ではダウンタイムの削減は27%しかなく、APACの他の国々よりも低く、それに対する備えはアジア各地で大きくばらつきます。オーストラリアは山火事災害が多いせいか87%が自然災害への備えを上げていますが、日本ではわずか10%しかありませんでした。新型コロナに対しても、日本ではエネルギー管理ソリューションを急ぐべきという企業はわずか7%、投資の遅れを懸念する声は3%で、90%の企業が何も変えないという答えでした。

日本はすでにエネルギー削減が進んできた
日本は、化石燃料依存への圧力を部分的に弱めようとして、かつてはエネルギー利用改善のパイオニアでした。電力中央研究所は1979年にエネルギーの有効活用を謳った法律を提案し省エネを進めた結果、一次エネルギー供給は1990年に対して2018年には2.89%減を達成しました。これはアジアの他の諸国(インドネシア+134.28%、オーストラリア+48.63%、韓国+203.8%、シンガポール+227.41%)と比べて素晴らしい結果となりました。

また、電力管理の最大の問題として日本企業の40%が取り上げたことは、専門知識が得られず専門的なノウハウがないことだとしています。韓国でも同様な割合が見られます。これまでもSTEM教育に力を入れてきた日本はまだ不足していると考えています。

・日本企業の40%しか、エネルギーを現在重要なビジネスと考えていません。また、60%が専門家やノウハウが不足していると答えています。
・今後1~3年間で運転コストを下げることに集中すべきと約半数が答えています。

政策・規制を変えることが日本最大の関心事
APACでは政府の方策や省エネへのインセンティブに関心が高まっていますが、日本ではそれほどではありません。インドネシア企業の57%は、それを熟知しているだけではなく、成功させる方法についても知っています。次がオーストラリアの40%で、日本はわずか17%しかいません。 

このような日本が政策や省エネプロジェクトへの参加率を調べると良く反映されています。日本の組織が省エネの役割を果たしていると確信している企業は29%しかいません。オーストラリアの96%とは対照的です。同様にインドネシア83%、シンガポール79%という参加率になっています。67%が環境規制を変えるための仕組みが出来ていないと感じています。つまり、もっと政府のサポートが必要なのでしょう。

日本のエネルギー政策では、2011年の東日本大震災とそれに伴う原子力発電所事故によりエネルギー供給が崩壊して10年が経ち、もっと効率よく、復元力の早い持続可能なエネルギーシステムの実現に向かって進化してきました。エネルギーミックス政策でエネルギーの選択肢を広げ、電力市場と天然ガス市場を改革しました。再生エネルギーの拡大と、原発の再稼働、エネルギー効率の改善によって、化石燃料の需要を削減し、温室効果ガスの抑制を2009年レベルまで持っていくように進めました。にもかかわらず、日本のエネルギー供給におけるCO2濃度はAPAC地区の中で最も高い部類でした。

しかし、2020年10月に菅義偉首相が、温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにするグリーン成長戦略を発表しており、日本も少しずつ変わりつつあります。この政府の宣言は、将来の日本のエネルギーおよび気候政策を定義したものであり、政府はこの目標に向けて更なる政策と手段の開発を進めています。

ただ、現在日本では化石燃料を輸入に大きく頼っており、2019年には全一次エネルギー供給量の88%にも達しています。2050年までの脱カーボンの目標を達成するためには低カーボン技術(ソーラーや風力、水素)への移行を加速し、規制や構造を改革しエネルギー市場での競争力を高める必要があります。同時に核燃料を使わない低カーボン技術を用意してこれまでとは違う脱カーボンかへのシナリオを進めていくことが重要です。

詳細は、次のホワイトペーパー「Eaton EnergyAware アジア太平洋地域のパワーマネジメントの未来」をダウンロードすれば読むことができます。

 

  さらに詳しく…

LinkedIn
Pinterest

フォロー(IMP 155 000フォロワー)