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HMS Industrial Networks AB
ワイヤレス化への道―どのワイヤレス規格がお客様に最適でしょうか?
WiFi、Bluetooth、それともZigbee? HMS Industrial NetworksのTom McKinneyが、産業アプリケーションのための短距離ワイヤレス規格の概要をご紹介します。
近年、インダストリアルIoT(以下IIoT)をめぐる話題が声高に議論されるようになりました。企業が運用に係わるデータをより多く取得し始めており、IIoTデバイス市場はこれから数年で飛躍的な成長を遂げるものと予測されています。そして、それらのデータはプロセスの監視や最適化に利用できるようになり、企業が取得したデータをプロセスの向上に利用するようになると、その結果、生産性が向上します。またこのデータは、社内の生産性の枠を超え、メーカーとユーザーの両者にとって利益のある企業間の連携向上につながる可能性もあります。大規模なIIoTの展開を可能とするために、多くの技術的進歩が集約されてきています。こうした進歩には、データストレージの低コスト化や省電力なRFソリューション、より高度なネットワーク接続性などが挙げられます。これに加えて、もう一つ重要なIIoTの要素に、ワイヤレス通信の規格化があります。
ワイヤレスは決して新しいものではない
ワイヤレスネットワークは、30年以上にわたり産業市場において使われてきました。かつて、これらのネットワークは、1GHz帯未満の独自システムというのが一般的でした。そうしたソリューションでは、振幅偏移変調(ASK)あるいは周波数偏移変調(FSK)といった単純な変調技術を使っていました。この種の変調をサポートする無線機器は、個々のわずかな部品で簡単に作ることができます。しかし、これらのソリューションは、安全性を完全に欠いており、帯域も限られているという欠点がありました。
そのため、過去20年で堅牢な無線ソリューションを確立しようと、いくつかの規格が開発されてきました。最近の規格では、広範に敷設しても十分な安全性が実現されています。80年代から導入された2.4GHzおよび5GHz帯を含む自由に利用できる新しい周波数帯もあります。今日では、規格化された無線ソリューションを配備することが、フィールドや工場内のデバイスの監視と制御のいずれにも、コスト効果が高く安全な方法となっています。こうした状況にあって、一定のワイヤレス規格を選べるわけですが、どの規格が適しているかが問題になります。
そこで、2.4GHz帯を利用する最も一般的な3つの規格である
Bluetooth、WiFi、Zigbeeをみてみましょう。
WiFi
WiFiすなわちIEEE 802.11a/b/g/nは、消費者および企業向けワイヤレスTCP/IPネットワークソリューションとして最も広く採用されています。WiFiは、Wireless Fidelity〔ワイヤレス・フィデリティー〕を短縮した名称で、無線LAN(WLAN)デバイスの識別に使われる規格です。この規格の管理団体は、最適な有線TCP/IPネットワークの置換えを目指しています。そこで、同団体では、他のあらゆる条件よりも、安全性と速度を最優先としています。その結果、802.11nは、あらゆる短距離ワイヤレス規格のなかでも最大の帯域幅が実現されています。一方、欠点は、消費電力と、802.11スタックの効率的な管理に必要な処理能力です。こうした欠点から市場に隙間が生まれ、いくつかの規格が非常に省電力なワイヤレスに対応するために登場することになりました。
Bluetooth
BluetoothとZigbeeはいずれも、WiFiではうまく対応しきれない市場向けに導入されました。Bluetooth規格は、省電力なパーソナルエリアネットワーク(PAN)でのニーズに応えました。PANとは、人1人あるいはスマートデバイス1台周辺のネットワークとして定義されます。その仕様は、高速な接続、シンプルなヒューマンマシンインターフェース、省電力であることが盛り込まれています。PANでは、複数の通信機器を非常に近く配置することが可能です。Bluetoothには、デバイスの送信がオーバーラップしないよう保証するタイミング機能が含まれているからです。Bluetoothもまた、WiFiと共存する前提で設計され、複数のWiFiチャネルがアクティブ状態であっても、Bluetoothのメッセージが確実に通過できるよう周波数を切り換えるアルゴリズムを備えています。最後に、Bluetoothは非常に省電力な送信器を使うため、WiFiほどマルチパスによる影響が出にくいもとなっています。したがって、Bluetoothは、RFサイトの大きな見直しや計画を行わなくとも、問題なく配備できます。また、同システムはノイズや干渉に対し高い耐性があります。
Zigbee
ZigbeeはIEEE 802.15.4に準拠しています。IEEE 802.15.4は、汎用の省電力な無線規格で、その標準規格の上にさまざまなプロトコルを構築することがきます。Zigbeeは、広範なエリアをカバーできる省電力センサーネットワークをサポートし、メッシュネットワークと非常に強力な電力プロファイルを採用することでニッチな市場ニーズに応えています。また、Zigbeeのプロトコルは、迅速に接続・切断が可能なように設計されており、省電力を実現しています。他にもISA100やWirelessHART、6LoWPANなどのプロトコルが802.15.4上で構築されています。
Bluetooth Low Energy
Bluetooth Low Energy(BLE)は、Bluetooth規格の最新版として導入されたものです。BLEは、802.15.4に用いられている技術の一部を活用することで、Zigbeeに比べても格段に低い消費電力を達成できるようになりました。さらに、もともとZigbee規格の取り組みから生まれた機能の多くもサポートしています。
お客様に合った規格を選ぶ
では、どの規格を採用するのが最適でしょうか?それはシステムの要件によります。要約すると、WiFiは帯域幅が最も大きく、最も包括的なスタックを備えているのに対し、BluetoothやBLE、Zigbeeは特定のアプリケーションにとって理想的な機能を提供しています。たとえば、電池式センサーを非常に広いエリアにわたって監視する場合には、Zigbeeが最適な規格です。一方、Bluetooth/BLEは、ポイントツーポイント技術のケーブルの置き換えや、比較的狭いエリアでのセンサーの監視に優れた機能を発揮します。また、BLEにはタブレットや携帯電話という大きな導入基盤があり、ヒューマンマシンインターフェースに優れた選択肢となっています。
技術的な規格は異なるにせよ、近い将来により多くのアプリケーションがワイヤレス接続されるようになることは間違いないでしょう。IIoTの登場によって、数十億ものデバイスがインターネット接続を必要とし、そうした接続の多くが間違いなくワイヤレスになるでしょう。
まとめ―各規格の長所と短所
1) WiFi
a. 長所
i. 広い周波数帯域幅、802.11nでは最大600Mbps
ii. 固定25MHzチャネル又はそれ以上
iii. 2.4 GHz及び5GHzチャネル対応
iv. 広範なセキュリティ機能
b. 短所
i. 高速データ転送速度と5GHzでの通信範囲が狭い
ii. 電池式センサーにはあまり適していない
2) Bluetooth/BLE
a. 長所
i. 非常に省電力
ii. 大規模に配置できる
iii. 密集した、あるいはノイズの多いワイヤレス環境でも優れた性能を発揮
iv. 使い勝手が良く周波数割り当てやサイトマップが不要
b. 短所
i. 最大データ転送速度が2Mbps
ii. 自動ローミング規格がない
3) Zigbee
a. 長所
i. 非常に省電力
ii. 2.4 GHz帯WiFiチャネル間での固定チャネル
iii. 1GHz未満の帯域をサポート
b. 短所
i. 複雑なメッシュネットワーク
ii. 最大帯域幅が250Kbps
著者について:Tom McKinneyは、HMS Industrial Networksで新たな革新技術を先行研究する HMS LabsのBusiness Development Managerです。ワイヤレスやVoIP、IEEE 1394技術におけるエンジニアリングマネジメントで長年のキャリアがあり、ワイヤレス技術について多くの著述や講演を行っています。
産業通信向けワイヤレスソリューションについてのさらなる情報につきましては、www.anybus.comをご覧ください。
Tom McKinney, Business Development Manager at HMS Industrial Networks
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