1kW級の高出力赤外レーザーダイオード「RLD8BQAB3」を開発
ロームは、距離計測や空間認識を行うLiDARを搭載した車載ADAS向けに高出力半導体レーザーダイオード「RLD8BQAB3」を開発し、民生機器や産業機器向けにサンプル供給を開始する。
新製品は、3D ToFシステム用いて距離測定や空間認識を行うLiDAR向けに開発された、超小型面実装タイプの125W×8ch高出力赤外レーザーダイオードアレイです。高放熱基板に設けたサブマウント上に、1素子で8個の発光エリア(各発光幅300µm)を有する赤外レーザーダイオードを設置。パッケージの発光面には、面実装タイプレーザーダイオードとしては業界初※のクリアガラスを用いたガラスキャップを採用しており、樹脂封止品などで生じがちなダイシング時の傷による光散乱の心配もなく、高いビーム品質を実現します。各発光エリアはカソードコモンで配線されており、発光ポイント数を増やせる個別発光から、業界最高レベル※の1kW級超高出力同時発光まで、アプリケーションに合わせた照射方法の選択を可能とします。
また、従来からロームレーザーダイオードの特長である、発光幅における均一発光強度や波長の低温度依存性0.1nm/℃(一般品は0.26~0.28nm/℃程度)も継承しており、アレイ化によるチャネル間の発光強度低下領域を狭くできるほか、バンドパスフィルターによる太陽など外乱光ノイズの影響の極小化が可能で、LiDARの遠方検知・高精細化に寄与します。
新製品は、2024年8月よりサンプル対応を開始しています。生産拠点は前工程がローム株式会社(本社:京都市)、後工程がローム・ワコー株式会社(岡山県)となります。どちらの工程も車載品質マネジメント規格のIATF 16949を取得済みです。また、本製品は2024年度中での車載対応(AEC-Q102準拠)に向けた準備も進めています。
背景
近年、車載ADASはもとより、AGVやドローン、ロボット掃除機など、動作の自動化を必要とする幅広いアプリケーションで、正確に距離測定・空間認識を行うことができるLiDARの採用が進んでいます。その中で、「より遠く」、「より正確に」情報を検知するため、光源となるレーザーダイオードには「kWレベルの高出力を出したい」、「複数の光源を狭間隔で発光したい」などの要望があります。
ロームは、LiDARの長距離対応・高精度化に貢献できる、レーザーの狭発光幅化を実現する独自の特許技術を確立しており、2019年に25W出力の「RLD90QZW5」を製品化したのを皮切りに、2023年には120Wの高出力レーザーダイオード「RLD90QZW8」を開発しています。今回、その技術の応用により125W、8ch(1kW級)のアレイ型新製品を開発することで、レーザーダイオードの高出力、高性能化の要求を実現しました。
用語説明
1) LiDAR(ライダー)
Light Detection And Rangingの略で、ToFシステム(光源およびToFセンサやイメージセンサ)などを用いて構成され、周囲の状況をセンシングするアプリケーションのこと。
2) 3D ToFシステム
ToFはTime of Flightの略称で、光源となる光の飛行時間を測ることで距離を割り出し、空間をセンシングする手法。それを用いて3D(3次元)の空間認識・距離測定を行うシステムのこと。
3) サブマウント
熱伝導の高い材料で作られた表面が平坦な小さな板状の取り付け台。
4) バンドパスフィルター
特定の光の波長帯の信号だけを通過させるフィルターのこと。オプティカルデバイスにおいては、バンドパスフィルターの範囲が狭ければ、ピーク波長に近い光のみを効率的に取り出すことができるため、太陽光などの外乱光ノイズの影響を極小化でき、同じ距離であれば低消費電力化が、同じ光出力であれば距離の伸長が可能となる。
5) IATF 16949
IATFはInternational Automotive Task Forceの略で、自動車産業の品質マネジメント規格の一つ。国際標準規格であるISO 9001をベースに、自動車産業固有の要求事項が追加されており、IATF 16949に準拠することで、自動車メーカーやサプライヤーは、国際的な品質基準を満たすことができる。
6) AEC-Q102
AECはAutomotive Electronics Councilの略で、大手自動車メーカーと米国の大手電子部品メーカーが集い、制定された車載用電子部品信頼性規格。Q102は、特にオプトデバイスに特化した規格となっている。
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