R-Car X5H: 高度な SDV 向け 3nm 車載用 SoC
ルネサスは、自動運転、IVI、ゲートウェイ向けの高性能 3nm マルチドメイン SoC である R-Car X5H を発表しました。そのチップレット技術により、次世代車両の拡張性、効率性、安全性が確保されます。
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ルネサス エレクトロニクス株式会社は、ADAS (先進運転支援システム)、IVI (車載インフォテインメント)、ゲートウェイの複数のアプリケーションに使用できる新世代の車載用 SoC (システム オン チップ) である R-Car X5H を発表しました。最先端の車載用 3nm (ナノメートル) プロセスを使用した高集積化により、低消費電力を実現しながら業界最高レベルのパフォーマンスを実現します。この新製品を車両の中央演算 ECU (電子制御ユニット) に使用することで、ユーザーは将来を見据えたシステム開発を効率的に実現できます。 R-Car X5Hは、2025年上半期に一部の自動車業界顧客へのサンプル出荷が開始され、2027年下半期に量産が開始される予定です。
R-Car X5Hは、アプリケーション処理用に32個のArm® Cortex®-A720AE CPUコアを搭載し、1,000k DMIPS以上の性能を発揮します。また、6個のCortex-R52 CPUコア(ロックステップ)で60k DMIPS以上の性能を実現し、外付けマイコン無しでASIL Dを実現可能です。さらに、最大400 TOPS(Sparse)のAIアクセラレータと、最大4 TFLOPS のGPU(Graphics Processing Unit)を搭載しました。チップレット技術を適用したことにより、AI性能やグラフィックス処理性能を拡張することも可能です。
R-Car X5Hは、TSMCの車載用先端3nmプロセスを採用したことにより、5nmプロセスで設計されたデバイスより消費電力を30~35%低減 します。優れた電力効率により冷却部品を削減できるため、システム全体のコストを低減しつつ、EV車両の航続距離の延長にも貢献します。一方、車載システム開発で課題となるセキュリティ&セーフティに対処するため、R-Car X5Hはハードウェアベースの独自の分離(パーティション)技術を適用したことで、安全レベルの異なる複数の車載アプリケーションを1チップ上に相互干渉することなく安全に搭載することができます。
R-Car Gen 5の中でも最高性能を誇るR-Car X5Hは、複雑化が進むSDV(ソフトウェア定義車両)の開発課題も解決します。SDVの開発では、車両の安全性を確保しながら、演算性能、消費電力、コスト、ハードウェアとソフトウェアの統合を最適化しなければなりません。R-Car X5Hは、アプリケーション処理、リアルタイム処理、AI処理、グラフィック処理、大型ディスプレイへの表示、センサ接続といった機能を1チップで実現することにより、次世代の自動運転やIVI、ゲートウェイアプリケーションに対応します。
チップレットの追加により柔軟性と性能を向上可能
R-Car X5H は強力なAIアクセラレータであるNPU(Neural network Processing Unit)とGPUを搭載しています。これをベースにして、チップレットを追加することにより性能の向上が可能です。例えば、R-Car X5H のAI処理性能は400 TOPSですが、外付けのNPUチップレットを組み合わせれば、AI処理性能を3-4倍以上に向上させることが可能です。R-Car X5Hではシームレスにチップレットを追加できるよう、チップレットのダイ間を接続する標準規格UCle(Universal Chiplet Interconnect Express)とAPI(Application Programming Interface)を提供し、マルチダイシステムで(ルネサス以外のチップを含む)他チップレットとの相互運用性を促進します。この柔軟な設計手法により、ユーザはさまざまな機能を組み合わせ、車両プラットフォーム全体のアップグレードに備えて、システムをカスタマイズすることが可能です。
セキュアな分離により、ミックスド・クリティカリティを実現
車載システムでは性能と機能だけでなく、安全性が何より重要です。従来ほとんどのSoCはハイパーバイザなどのソフトウェアによって、ミックスド・クリティカリティ(複数の異なる安全レベルを要求されるソフトウェアを単一のチップ上で実行すること)を実現していました。これに対し、R-Car X5Hは、ハードウェアベースの無干渉(Freedom from Interference:FFI)技術を適用しています。このハードウェア設計により、ブレーキなど高い安全レベルが求められる機能を、低い安全レベルの領域から安全に分離することができます。高い安全性が求められる機能は冗長化した独立ドメインに割り当てられ、各ドメインに独自のCPUコア、メモリ、インタフェースを持たせることで、他のドメインのハードウェアやソフトウェアに故障が発生した場合でも影響を受けないため、重大な車両故障を回避できます。R-Car X5Hは、ワークロードの優先順位を見極めてリアルタイムに処理リソースを割り当てるQoS(Quality of Service)管理機能も備えています。
スケーラビリティを備えた第5世代R-Carプラットフォーム
ルネサスのR-Car Gen 5は、ゾーン型ECUからハイエンドの集中型コンピューティングまで、業界屈指の幅広い処理要件をサポートし、エントリレベルの車両から高級車まで対応します。Arm CPUコアをベースとするスケーラブルなハードウェアアーキテクチャを採用しているため、本R-Car X5Hをはじめとする64ビットSoCから32ビットマイコンまで、同じソフトウェアやツール、アプリケーションを再利用できます。32ビットマイコンとしては、Armコア搭載の新しいR-Carマイコンも展開し、車両制御用のポートフォリオを拡充する計画です。ボディとシャシー向けにセキュリティを強化したArmコア搭載の車載制御用マイコンは、2025年第1四半期にサンプル出荷を開始する予定です。
R-Car Open Access(RoX)プラットフォームを活用したSDV開発
R-Car Gen 5は、ハードウェアとソフトウェアを包括的な開発プラットフォームに統合することで、SDV開発を加速します。このR-Car Open Access(RoX)SDVプラットフォームは、ユーザが次世代の車両を迅速に開発し、安全性を確保しながらソフトウェアアップデートを継続的に実施するために必要なハードウェア、オペレーティングシステム(OS)、ソフトウェア、ツールを統合しています。RoXは、ADAS、IVI、ゲートウェイ、クロスドメインフュージョンシステムからボディ制御、ドメイン制御、ゾーン制御のシステムまで、幅広いスケーラブルなコンピューティングシステムを設計できる柔軟性に優れたプラットフォームです。
R-Car X5Hの新製品に関するブログは、「R-Car Gen 5 SoCで集中型車載コンピューティングとSDVアーキテクチャの開発を加速」をご覧ください。
R-Carファミリについては、「R-Car自動車用SoC」をご覧ください。
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