www.engineering-japan.com
26
'25
Written on Modified on
日本における150kWラックレベル液冷の実証検証
IDCフロンティアは、実稼働データセンター環境においてVertivのインフラを用い、高密度AIおよびHPC向けの直接液冷性能を検証した。
www.vertiv.com

AIおよびHPCの導入拡大によりラック当たりの電力密度が空冷の限界を超える中、データセンター事業者は実用的な代替手段として直接液冷の評価を進めている。このような背景のもと、IDCフロンティア株式会社はVertiv Japanと共同で、直接液冷(DLC)を用いた150kW/ラック環境におけるGPUサーバーの安定稼働を現地検証した。
ラック高密度化が液冷導入を後押し
AIワークロードの急速な拡大により、高出力GPUサーバーの採用が進み、ラックレベルでの発熱量は大幅に増加している。一般的な空冷設計では30~50kW/ラックを超える運用が困難とされ、液冷型データセンターへの需要が高まっている。こうした動向を受け、IDCフロンティアは2025年7月に「DLCハウジングサービス」を開始し、東京府中および奈良生駒の両データセンターで展開している。
今回の共同検証は、実運用環境で取得した測定データおよび運用データを、液冷サーバー導入を検討する顧客の参考情報として提供することを目的として実施された。専用区画を新設することなく、小規模構成から段階的に導入したい顧客ニーズへの対応も重要な検証テーマとなった。
150kW/ラック環境での実地検証
検証は東京府中データセンターにおいて、Vertiv製の実機クーラント分配ユニット(CDU)と、GPUサーバー相当の発熱を再現する模擬負荷装置を用いて実施された。冷媒を実際に循環させ、最大150kW/ラックの高負荷条件下で冷却性能を確認した。
検証は「DLCハウジングサービス」で想定される2つの提供形態を前提に行われた。1つ目は、液冷設備を備えたフロアにインラック型CDUを設置する「エリアDLC」。2つ目は、ラック単位で液冷を可能にするサイドカー型CDUを用いた「カスタムDLC」である。
高負荷時の運用特性評価
最大冷却能力の確認に加え、本検証では実運用において重要となる複数の項目を評価した。具体的には、冷媒漏えい検知方法、CDU片系統遮断時の挙動、負荷追従性、負荷の偏在時の挙動などである。その結果、単一ラック構成でも安定した冷却運用が可能であることが確認され、検証用途や開発ラボ、段階的なAIクラスタ拡張といったユースケースに適用可能であることが示された。
AI・HPCデータセンターへの示唆
今回得られた実測データおよび運用知見をもとに、IDCフロンティアは液冷環境向けの設計・構築支援の精度を向上させた。「DLCハウジングサービス」は、1ラックから利用可能なデータセンターサービスとして位置付けられ、液冷導入における初期ハードルの低減を狙っている。
本検証は、日本国内の既存データセンター環境においても、ラックレベルの直接液冷が運用面を含めて実装可能であることを示した。IDCフロンティアは、得られた知見を活用し、液冷導入時の懸念点や課題の解消を図るとともに、AIおよびHPC向けデジタルインフラの高度化を継続的に支援していくとしている。
www.vertiv.com

