自動運転レベル2+/レベル3を普及車へも搭載可能にする、車載用SoC「R-Car V4H」を発売
~ソフトウェアディファインド車両の開発へ向けて開発環境も提供~.
ADAS/AD向け車載用 SoC R-Car V4Hを発売
ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO: 柴田 英利、以下ルネサス)は、このたび、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転(AD)システムのメインプロセッシング用SoC(System on Chip)「R-Car V4H」を発売しました。R-Car V4Hは、最大34TOPS(Tera Operations Per Second)のディープラーニング性能を実現し、車載カメラやレーダ、ライダによる周囲の高速な画像処理や物体認識が可能です。R-Car V4Hは、最もボリュームの大きい普及価格帯の車両に自動運転レベル2+およびレベル3を搭載できるよう、性能と消費電力のバランスを重視した上で最適なIP(Intellectual Property)を組み合わせ、業界トップレベルの電力性能比を実現しました。また、R-Car V4Hは多くの機能を統合しているため、1チップでコスト競争力のあるADAS用ECU(電子制御ユニット)を開発することができます。ドライバモニタリングや緊急自動ブレーキなどEuroNCAP 2025のフル機能にも対応可能で、3Dサラウンドビューや自動駐車機能も実現できます。R-Car V4Hは、本日よりサンプル出荷を開始し、量産は2024年第2四半期を予定しています。
ルネサスの車載デジタルマーケティング統括部の統括部長、吉田 直樹は、次のように述べています。「すでに量産車に搭載され好評を博しているR-Car V3HとR-Car V3Mに続いて、今回R-Car V4Hを発売しラインアップを拡充できることを嬉しく思います。ルネサスがスケーラブルなR-Carのポートフォリオを拡大していくことにより、ミッドレンジからエントリレベルまで、あらゆる車種に最先端のADASが搭載されることを期待しています。」
機能安全をサポートするR-Car V4Hと、PMICと組み合わせた電源ソリューション
自動車向け機能安全規格ISO 26262への対応については、安全に関連するすべてのIPのシステマティック故障への対策として、ASIL Dに対応可能なSoCの開発プロセスを適用予定です。R-Car V4Hは、信号処理部はASIL B、リアルタイム処理部はASIL Dのメトリクスを達成見込みです。また、ルネサスは、プリレギュレータRAA271041および最大11チャネルを出力するPMIC RAA271005を中心とした、R-Car V4H 専用の電源ソリューションを提供します。この電源ソリューションにより、車両バッテリの12V電源からR-Car V4Hや周辺メモリに信頼性の高い電源を供給することができます。これらにより、極めて低いBOM コストでシステマティック(決定論的)およびランダム(偶発的)ハードウェア故障に対する ASIL Dへの対応を支援しながら、設計の複雑さを軽減し、市場投入までの時間とコストを削減します。
開発環境の提供により、ソフトウェアディファインド車両開発を支援
ソフトウェア開発をより迅速かつ容易に行うため、R-Car V4H用ソフトウェア開発キット(SDK)を提供予定です。このSDKは、機械学習の開発および、性能や電力効率、機能安全などのシステムの最適化を図るための機能を備えています。シミュレーションモデルが利用可能で、OSに依存しないソフトウェアプラットフォームのため、ソフトウェアディファインド車両の開発に有用です。また、デバイスの初期評価やディープラーニングアプリケーション開発に向けては、フィックスターズ社と共に提供するクラウド評価環境GENESIS for R-CarがR-Car V4Hに対応する予定です。これにより、どこからでもR-Car V4HのCNN性能を評価でき、迅速かつ容易にCNNベンチマーク結果を確認することが可能です。
R-Car V4Hの主な特長
- ADAS/ADアプリケーション向け汎用演算処理用に、1.8GHz動作のArm® Cortex®-A76コアを4個(合計49k DMIPS)搭載
- 1.4GHzのロックステップ構成Cortex-R52コアを3個(合計9k DMIPS)搭載し、ASIL Dをターゲットとするリアルタイム動作をサポートするため、外付けマイコンが不要
- ディープラーニングやコンピュータビジョン向けに各種専用IPを搭載し、合計34TOPSを実現
- マシンビジョンとヒューマンビジョンの並列処理を行うイメージシグナルプロセッサ(ISP)搭載
- 歪み補正の演算を行うイメージレンダラ(IMR)搭載
- グラフィックプロセッシングユニット(GPU)として600MHz 動作のAXM-8-256を搭載し、合計50GFLOPS以上を実現
- CAN、Ethernet AVB、TSN、FlexRayの車載インタフェースを搭載
- 第4世代PCIeインタフェース2個搭載