www.engineering-japan.com
28
'23
Written on Modified on
Mitsubishi Electric News
世界初、AI デジタル制御機能を備えたポスト 5G 向け基地局用 GaN 増幅器を開発
三菱電機株式会社と湘南工科大学は、NEDOの委託事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化のための研究開発事業」において、ポスト5G向け高周波窒化ガリウム(GaN)アンプを世界で初めて開発します。 -5G基地局。
AIデジタル制御機能を備えたポスト5G向け基地局用GaN増幅器のイメージ
NEDOの委託事業である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(以下、本事業)で、三菱電機株式会社と学校法人湘南工科大学は、世界で初めて、ポスト5G向け基地局用窒化ガリウム(GaN)増幅器に高周波入力信号を人工知能(AI)でデジタル制御する機能を搭載し、業界水準のひずみ性能(ACLR)-45dBcと、動作周波数帯域幅4000MHzを両立したGaN増幅器を開発し、動作実証に成功しました。
さらに、市販測定器を制御する独自プログラムを考案し、評価に要する時間を従来の100分の1以下となる30秒以下で完了できる高速評価システムの構築に成功しました。これらの開発成果が、ポスト5G情報通信システムの中核をなす基地局に実装されることにより、高品質データの大量送信および通信インフラの維持を目指す基地局シェアリングの実現に貢献します。
1.背景
情報通信ネットワークを構成する移動通信では、2020年に第5世代移動通信システム(5G)が開始され、2025年頃にはポスト5Gとして、さらなる高速・大容量通信や多数同時接続通信が本格的に開始される予定です。ポスト5G向け基地局では、高速・大容量通信を実現するため、高品質なデータを一度に大量送信する必要があります。また、自然災害やシステム障害などの不測の事態が発生しても平常通りの情報通信ネットワークを維持するため、基地局シェアリングの実現が求められています。基地局シェアリングの実現により、基地局の設置・運用コスト低減が期待できるだけでなく、通信システム全体として冗長性を増すことができます。しかし、これらを実現するためには、無線部を構成する増幅器の広帯域動作などが課題となっています。
このような背景の下、NEDOは本事業で基地局関連技術の研究開発を推進しており、その一環として、2020年10月から三菱電機と湘南工科大学は、「基地局増幅器のための広帯域化回路技術の研究開発」に取り組み、高品質データの大量送信およびポスト5G以降の通信インフラを維持する基地局シェアリングの実現を目指してきました。
通信インフラを支えるポスト5G通信のイメージ
基地局シェアリングの変遷
2.今回の成果
(1)AIデジタル制御機能を備えたGaN増幅器の開発
ポスト5G向け基地局用GaN増幅器に求められる広帯域動作を実現するためには、従来の1入力型構成ではなく、2入力型構成の採用が有効ですが、二つの高周波入力信号を動作周波数や出力電力レベルなどに応じて最適に制御する必要があります。今回、独自の評価関数に基づき、GaN増幅部への二つの高周波入力信号を、三菱電機のAI技術を活用して、AIによるデジタル制御をすることにより、ポスト5Gで求められる水準を満たす動作効率40%以上を維持し、世界で初めて、業界水準のひずみ性能(ACLR)-45dBcと、動作周波数帯域幅4000MHzを両立したGaN増幅器の動作実証に成功しました。
(2)高速評価システムの構築
さらに、開発した二つの入力端子を備えたGaN増幅器の性能を短時間で評価できる高速評価システムの構築にも成功しました。従来、GaN増幅器への二つの入力信号の電力分配比と位相差には、膨大な数の組み合わせがあるため、GaN増幅器の性能評価には時間を要していました。今回、市販測定器を制御する独自プログラムを考案し、高速評価システムの構築に成功したことにより、評価回数18万2160回に要する時間を従来の100分の1以下となる30秒以下で完了できることを確認しました。
これらにより、無線部を構成する増幅器の広帯域動作に関する課題を解決し、複数の周波数帯域でも、1台のGaN増幅器で低ひずみの高周波信号を出力することが可能となりました。今回の開発成果が、ポスト5G情報通信システムの中核をなす基地局に実装されることにより、高品質データの大量送信と基地局シェアリングの実現に貢献します。
3.今後の予定
三菱電機は、ポスト5G向け基地局用GaN増幅器の実用化に向けて研究開発を継続し、2028年以降の事業化を目指します。また、湘南工科大学は、ポスト5G基地局における無線部の基礎研究を継続し、通信インフラを担う次世代の技術者の育成、産業の発展に貢献します。
なお、三菱電機と湘南工科大学は、本研究開発成果について、2023年11月29日から12月1日までパシフィコ横浜で開催される「マイクロウェーブ展2023」に出展します。
NEDOの委託事業である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(以下、本事業)で、三菱電機株式会社と学校法人湘南工科大学は、世界で初めて、ポスト5G向け基地局用窒化ガリウム(GaN)増幅器に高周波入力信号を人工知能(AI)でデジタル制御する機能を搭載し、業界水準のひずみ性能(ACLR)-45dBcと、動作周波数帯域幅4000MHzを両立したGaN増幅器を開発し、動作実証に成功しました。
さらに、市販測定器を制御する独自プログラムを考案し、評価に要する時間を従来の100分の1以下となる30秒以下で完了できる高速評価システムの構築に成功しました。これらの開発成果が、ポスト5G情報通信システムの中核をなす基地局に実装されることにより、高品質データの大量送信および通信インフラの維持を目指す基地局シェアリングの実現に貢献します。
1.背景
情報通信ネットワークを構成する移動通信では、2020年に第5世代移動通信システム(5G)が開始され、2025年頃にはポスト5Gとして、さらなる高速・大容量通信や多数同時接続通信が本格的に開始される予定です。ポスト5G向け基地局では、高速・大容量通信を実現するため、高品質なデータを一度に大量送信する必要があります。また、自然災害やシステム障害などの不測の事態が発生しても平常通りの情報通信ネットワークを維持するため、基地局シェアリングの実現が求められています。基地局シェアリングの実現により、基地局の設置・運用コスト低減が期待できるだけでなく、通信システム全体として冗長性を増すことができます。しかし、これらを実現するためには、無線部を構成する増幅器の広帯域動作などが課題となっています。
このような背景の下、NEDOは本事業で基地局関連技術の研究開発を推進しており、その一環として、2020年10月から三菱電機と湘南工科大学は、「基地局増幅器のための広帯域化回路技術の研究開発」に取り組み、高品質データの大量送信およびポスト5G以降の通信インフラを維持する基地局シェアリングの実現を目指してきました。
通信インフラを支えるポスト5G通信のイメージ
基地局シェアリングの変遷
2.今回の成果
(1)AIデジタル制御機能を備えたGaN増幅器の開発
ポスト5G向け基地局用GaN増幅器に求められる広帯域動作を実現するためには、従来の1入力型構成ではなく、2入力型構成の採用が有効ですが、二つの高周波入力信号を動作周波数や出力電力レベルなどに応じて最適に制御する必要があります。今回、独自の評価関数に基づき、GaN増幅部への二つの高周波入力信号を、三菱電機のAI技術を活用して、AIによるデジタル制御をすることにより、ポスト5Gで求められる水準を満たす動作効率40%以上を維持し、世界で初めて、業界水準のひずみ性能(ACLR)-45dBcと、動作周波数帯域幅4000MHzを両立したGaN増幅器の動作実証に成功しました。
(2)高速評価システムの構築
さらに、開発した二つの入力端子を備えたGaN増幅器の性能を短時間で評価できる高速評価システムの構築にも成功しました。従来、GaN増幅器への二つの入力信号の電力分配比と位相差には、膨大な数の組み合わせがあるため、GaN増幅器の性能評価には時間を要していました。今回、市販測定器を制御する独自プログラムを考案し、高速評価システムの構築に成功したことにより、評価回数18万2160回に要する時間を従来の100分の1以下となる30秒以下で完了できることを確認しました。
これらにより、無線部を構成する増幅器の広帯域動作に関する課題を解決し、複数の周波数帯域でも、1台のGaN増幅器で低ひずみの高周波信号を出力することが可能となりました。今回の開発成果が、ポスト5G情報通信システムの中核をなす基地局に実装されることにより、高品質データの大量送信と基地局シェアリングの実現に貢献します。
3.今後の予定
三菱電機は、ポスト5G向け基地局用GaN増幅器の実用化に向けて研究開発を継続し、2028年以降の事業化を目指します。また、湘南工科大学は、ポスト5G基地局における無線部の基礎研究を継続し、通信インフラを担う次世代の技術者の育成、産業の発展に貢献します。
なお、三菱電機と湘南工科大学は、本研究開発成果について、2023年11月29日から12月1日までパシフィコ横浜で開催される「マイクロウェーブ展2023」に出展します。
www.mitsubishielectric.co.jp