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スズキ、船外機のエンジン部品に耐食性の アルマイト処理を施す新技術を開発
スズキ株式会社は、船外機のエンジン部品であるシリンダーブロック、シリンダーヘッド、クランクケースに、高温にも耐えられる耐食性のアルマイト処理を施す新技術を開発し、2024年8月よりDF140Bの一部仕様に量産機種として初採用※1しました。
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船外機はエンジンの冷却のため、海水など大量の水をくみ上げながら走行することから、この冷却水路に腐食を防ぐ処理を施す必要があります。今回スズキが開発したものは、冷却水が通るエンジン部品にむらなくアルマイト処理を施すことで、海水に対する耐食性を向上させるとともに、従来の耐食性向上のための表面処理の工程と比較してCO2排出量を約50%削減するなどカーボンニュートラルにも貢献する新技術です。
新技術の主な特長
1. アルマイト処理による耐食性の向上
アルマイト処理とは、アルミニウムを電解液に浸けて電気を流すことにより、表面に多孔質の層を生成させる処理方法です。表面に酸化アルミニウムの皮膜ができることで耐食性が向上します。今回、部品を浸ける際に空気だまりが発生しないように工夫することで、複雑な形の冷却水路をむらなく処理することが可能となりました。
2. 金属水和物を使った低温封孔処理による耐熱性向上
アルマイト処理によって生成された皮膜はごく高温にさらされると割れが生じ、耐食性が低下することから、高温になるエンジン部品への処理としては不適でした。今回、表面の微細孔をふさぐために金属水和物を使った低温封孔処理を行うことで、摂氏300度の高温にさらされても耐食性が低下しないアルマイトの封孔処理方法を確立しました。この処理方法は量産船外機のエンジン部品としては世界初採用※1です。
3. 鋳鉄スリーブを電解液に触れさせない密閉技術
シリンダーブロックに組み込まれた鋳鉄スリーブは、電解液に接触すると電気分解による孔食が発生し、不良品となってしまいます。そのため、鋳鉄スリーブに電解液を触れさせないよう専用のシール治具で密閉する技術を開発しました。この技術は現在特許申請中です。※2
4. 製造時CO2削減によるカーボンニュートラルへの貢献
従来の冷却水路の耐食性を向上する表面処理は、化成処理をした後に塗装を行っていましたが、アルマイト処理に切り替えることでこの工程を省略することができます。塗装の乾燥、焼き付け処理のためのエネルギー消費を不要とし、従来の処理方法と比べてCO2排出量を約50%削減しました。
マリン事業本部 三嶋 秀一本部長のコメント
今回スズキの船外機で採用した技術は、耐食性を上げることによる商品性向上のほか、製造時のCO2を削減しカーボンニュートラルにも貢献する、量産船外機として世界初※1の技術です。チームスズキで新技術開発に挑戦し、エンジン部品へのアルマイト処理を量産化することができました。
今後も、全社一丸となって船外機技術を発展させ、お客様に喜んでいただける商品開発を継続してまいります。
※1 スズキ調べ
※2 2025年2月現在
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