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熱効率を改善して持続可能なデータ・センタ運用を実現する方法

サーバの消費電力が増加する中、半導体設計とパッケージングにおける革新的な技術は、データ・センタの効率改善に貢献します。

熱効率を改善して持続可能なデータ・センタ運用を実現する方法

最新動画のストリーミング鑑賞や、AI 搭載のスマート・アシスタント利用、オンライン会議への参加など、私たちはデータ・センタ経由で大量のデジタル・データを送信し、同時に大量の電力を消費しています。そして、その使用量は増加の一途をたどっています。

2022 年には、世界全体で 100ゼタバイト( 100 兆 ギガバイト) 近くのデータを生成し、消費することが見込まれています。この膨大な量のデータは、2025年までにほぼ倍増すると予測されています。1 そして、そのデータは、何千台ものサーバで構成される超大型データ・センタを経由するケースが増えています。

米国政府の試算によると、データ・センタのエネルギー需要は年間70テラワット時です2ブロックチェーン・マイニングの増加だけで、この数字はその後2倍以上になっています。Center of Expertise for Energy Efficiency in Data Centers (データ・センタ内のエネルギー効率に取り組む専門知識センタ) によると、データ・センタの現在の消費量は、米国全体の総電力消費量のうち少なくとも 2% を占めていると試算されています。3 これは環境に顕著な影響を及ぼすには十分な値であり、より持続可能な方法で運用できるデータ・センタの実現への緊急性が高まっています。

「膨大なデータを取り扱い、処理することができるように、これらのセンタ内にあるサーバが進化するにつれて、各サーバで消費される電力量も増加します。以前は、サーバ 1 台あたり平均 1,500ワット だったものが、より新しいサーバでは 3,000ワットにまで増加しています」と、産業用パワー・マネージメントを専門とする、システム・マネージャである Robert Taylor は語ります。

サーバ電源装置(PSU)の電力密度を高め、効率を向上させることは、より効率的なデータ処理を実現するための一つの方法です。

「サーバのPSUのアップグレードは急務である」と、Robert は語ります。しかし、データ・センタの電力需要の増大は、ボトルネックに直面しています。大半の超大規模データ・センタは、50メガワット を上回る電力を引き込むことができません。

「この種のデータ・センタは電力の総量に制限があるため、冷却に要する電力や、電子機器の効率の低さに起因する損失をできるだけ低減する必要があります」と、Robert は語ります。

「同時に、サーバ業界では、各ラックにより多くのコンピューティングパワーを搭載するために、プリント基板の面積小型化が要求されています」これはつまり、発熱を増やさずに、サーバ内の電源部品の小型化と効率向上を進める必要があるということを意味します。

革新的な半導体電源部品の製造へ取り組んできたTIの製品を採用することで、現在および将来の最先端データ・センタが求める、性能、効率、熱管理に関する非常に高い要件に対処できます。これらの電源は、最大規模のデータ・センタでも、より持続可能なフットプリントで円滑な運用に役立っています。

より高い電力と温度への対応
高性能でエネルギー効率に優れたパワー半導体にとって重要なのは、より高い水準の電力密度を達成することです。つまり、より小さい容積により多くの電力処理能力を詰め込むことです。しかし、電力密度が高ければ高いほど、小さな容積に多くの熱を詰め込むことにもなります。その結果、性能を維持すると同時に部品を熱から保護するために、高度な熱管理手法が必要になります。

電力密度向上のニーズは、データ・センタに限ったことではありません。電力網や通信機器、電気自動車 (EV) や個人用電子機器といった多様な電気系システムでも、より高密度で熱効率の優れた電源チップが提供する、性能と効率が必要とされています。

効率的なパッケージの採用で発熱量を低減
TI は、サーバ向け電源チップの電力密度向上という課題に取り組んでいます。複数のスイッチを内蔵した 小型アウトライン・トランジスタ (SOT) パッケージを採用することで、電力密度や性能の境界を拡張すると同時に、コストの削減を実現します。

熱管理に対する革新的なアプローチが、このような進歩の実現へつながります。チップ・レベルで放熱特性を改善し、電力密度の障壁を打破するために、TI はプロセス技術、回路設計手法、放熱最適化パッケージの 3 つの重要分野に注目しています。

サーバが生成する熱の多くは、受け入れた 400V の AC 電力を 6V またはそれ以下の DC 電力に変換するときの電力損失に起因します。パワー・モジュール 『TLVM13630』 のような製品は、TI の Enhanced Hotrod™ クワッド・フラット・リード端子なし(QFN ) パッケージ技術(英語)を、複数の内蔵 電界効果トランジスタ(FET) と組み合わせて使用しています。これらの 電界効果トランジスタ(FET) はスイッチング速度が速く、オン抵抗が小さいので、自らの電力損失を大幅に低減し、チップの効率を高め、その結果発熱も減少します。

「シリコン製品内のどのような抵抗も非効率につながります。それは電力の消費と余分な発熱を意味します」と、TI で QFN/SOT パッケージ開発ディレクターを務める Les Stark は語ります。

余分な熱を発生させる損失をさらに削減するために、TIはFETやコンデンサなど、より多くの部品を電源チップに統合するといった業界をリードする機能を活用しています。この統合の結果、スイッチングの高速化と効率向上、さらにノイズを低減できます。この点は、オン抵抗が非常に小さい TPS25985 eFuse と同様です。また、統合を通じて、放熱特性を改善すると同時に、最大 80A の電流を流すことができます。特定の状況では、TI はチップの上に他の部品を積み重ねる 3 次元スタックを使用して、さらなる統合を実現しています。

放熱強化パッケージの採用で熱を効果的に放出
TI はまた、革新的なデバイス・パッケージングを通じてチップから熱を放出する面においても優位性を確保しています。たとえば、TI は最初に HotRod と Enhanced HotRod QFN の各パッケージを開発しました。これらはフリップチップ形式のパッケージを使用し、従来のパッケージがチップへの信号の入出力にボンド・ワイヤを使用しているのに対し、チップの表面とそのコネクタを回路基板に直接貼り付けています。このような直接接続は、チップからボードに熱を移動する際により効率的です。

「このパッケージ設計は、面積の大きいグランド・パッドを実現します。以前は実現できなかった手法ですが、デバイスからプリント基板への良好な放熱経路を確保できます」と、Les は語ります。

熱を放出することに対し、 TI が採用している他の高度なアプローチは、上面冷却を改善するための、より効果的なヒートシンク配置です。TI の GaN (窒化ガリウム) FET は、上面冷却パッケージを採用しています。データ・センタのシステムでは、この方式が今後ますます重要になります。より多くの計算能力を各サーバに収容する流れは、より密度の高い新たな部品配置につながり、その結果、熱をチップ外に放出するために多くの経路が必要になるからです。

「GaN を採用すると、電力密度をいっそう高めることができます。冷却に関するこの種のフレキシブルなアプローチは、いっそう重要になる見込みです」と、Robert は語ります。

効率向上と熱放出に関するどのアプローチも、小型チップが採用することで、熱管理と効率に大きく貢献します。サイズと効率の両方に関してパッケージを最適化すると、データ・センタを取り扱う顧客は熱の問題を解決しやすくなり、環境負荷を減らすのに役立ちます。

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